国際オリンピック委員会(IOC)は24日、電話による緊急理事会を開き、国ぐるみのドーピング問題が発覚したロシアをリオデジャネイロ五輪から全面除外する処分は見送ることを決めた。

 出場の可否は各競技を統括する国際連盟(IF)に判断を委ね、厳しい条件を付けた。スポーツ大国との深刻な亀裂を生むリスクを回避した一方、8月5日の五輪開幕を間近に控えて出場資格を巡って混乱する可能性が出てきた。

 IFがロシア選手の出場を認める上で、過去にドーピング違反歴がないことや、信用できる国外検査をクリアしていることなどの条件を付けた。出場を受け付けた選手には、追加の検査を義務付けた。

 IFは各選手の過去の検査履歴や、世界反ドーピング機関(WADA)の調査チームが18日に公表した報告書に記載のあった違反について、当該選手が関わっていないか調べなければならない。

 IOCのバッハ会長は電話記者会見で「国全体の責任か個人の正義かの判断でバランスを重視した」と述べた。

 ロシア陸上界のドーピング問題を内部告発した女子中距離のステパノワ選手のリオ五輪参加は認めない方針も決めた。国際陸連が問題発覚への貢献を考慮し、国際大会出場を認めたが、IOCは違反歴があることを問題視した。

 WADAの調査チームは、2014年ソチ冬季五輪などでスポーツ省が主導してロシア選手の禁止薬物使用を隠蔽(いんぺい)する不正があり、夏季五輪の20競技も対象だったと断定した。WADAはリオ五輪からのロシアの除外を検討すべきだとIOCに勧告。IOCは19日の緊急電話理事会でも協議したが、結論を先送りしていた。

 21日にはロシア陸上チームの五輪参加禁止がスポーツ仲裁裁判所(CAS)の裁定により確定。国際パラリンピック委員会(IPC)は同国の資格停止に向けた手続きを開始し、リオ大会参加が厳しい情勢になっていたが、IOCの判断が影響する可能性もある。

 ロシアは前回12年ロンドン五輪では金メダル数で4位だった。