【リオデジャネイロ13日(日本時間14日)=三須一紀】リオ五輪が中間地点を折り返した。開幕直前の地元世論調査で開催反対派が約50%を占め、5日の開会式当日には抗議デモが各地で発生するなど、異例ずくめの今大会。そもそも市民の多くはなぜ、五輪に反対しているのか。ブラジルトップ3の頭脳を誇るリオデジャネイロ連邦大の政治学者、ブルーノ・シベラス・デ・カルバーリョ教授(41)が解説する。

 Q

 そもそもリオはなぜ五輪を招致?

 A

 招致が決まった09年時はルーラ大統領のもと、経済的に発展していた。世界的に認められ、先進国へのステップアップとしたかった。招致決定時はコパカバーナビーチでパブリックビューイングも行われたほど。しかし、7年間で経済は違う国のようになってしまい、五輪どころではなくなった。反対派は貧困層だけでなく富裕層にもいる。

 Q

 7年間で経済が打撃を受けた理由は

 A

 率直に政治の問題。ルーラ大統領の8年間の次に、ジルマ・ルセフ氏がブラジル初の女性大統領となった。ルセフ氏の4年間も安定したが、2期目中の2年たった今年、「汚職疑惑」が持ち上がり、議会の弾劾決議を受けて180日間の職務停止を受けた。大統領代行のミシェル・テメル氏も支持率が15%以下と低く、ルセフ氏も裁判中のため、ブラジル全体で政局ばかりで国が動かないのが最大の原因だ。

 Q

 本当のところルセフ氏は悪いの?

 A

 財政赤字を隠そうとして銀行から金を借りたとの疑惑だが、ただの農業対策、貧困対策の財政出動であり、これまでの政府もやってきたこと。裁判所もルセフ氏に責任はないと認めたばかり。今回の騒動はテメル氏の政党のサボタージュ(妨害行為)のように見える。

 Q

 ルセフ氏とテメル氏の違いは?

 A

 ルセフ氏は労働者党で貧困層の底上げを主とする。テメル氏は右寄りの民主運動党で経済優先、富裕層優遇の方針だ。

 Q

 銃撃戦などがある危険なファベーラ(貧民街)を変える政策はないの?

 A

 以前はなくそうという政策はあったが、今は彼らのファベーラに電気、ガス、水道を送り、生活の底上げを促す政策に転換した。麻薬やギャングの問題はすぐには解決しない。生活水準の底上げをすれば、治安回復も自然と付いてくるとの考え方だ。

 Q

 リオ五輪は将来的に何をもたらす?

 A

 バルセロナのように世界中の人が観光で訪れるようになると思う。ただし、国のレベルアップにはあまりつながらない。スタジアムや道路を建設した約400億円の借金が残る。

 ◆ジルマ・ルセフ

 1947年12月14日、ブラジル南東部ミナスジェライス州生まれ。60年代の軍事政権下、16歳で反体制活動に参加し、3年間投獄された。リオグランデドスル連邦大卒。01年に労働党入党。鉱業・エネルギー相、官房長官を歴任し、11年に同国初の女性大統領に就任。