五輪初出場の川井梨紗子(21=至学館大)がマリア・ママシュク(23=ベラルーシ)を破り、2階級上げての五輪挑戦を実らせて金メダルを獲得した。世界選手権では昨年の準優勝が最高で、初めて世界の頂点に立った。

 第1ピリオド開始30秒ほどで両足タックルで相手を倒し、バックを取って2点先行。第2ピリオドも開始1分過ぎに右への片足タックルで2点追加。残り10秒ほどにも2点を追加して6-0で快勝した。

 勝ち名乗りを受けると、駆け寄った栄強化本部長に「投げさせてくださいと言っていた」という飛行機投げ2連発。肩車をしてマットを1周するときは重そうな顔を作って笑った。貫いた攻撃レスリングに「これが自分が教わったレスリングです」と胸を張った。

 初めて世界の頂点に立った。「世界選手権の決勝では決勝に上がれることがうれしくて舞い上がってしまったので、その雪辱は大きい舞台でしか晴らせない。前日の3人が金メダルを取っていたので、自分も絶対に金メダルという気持ちでした」。五輪出場権を獲得しただけで満足してしまい、最後に敗れてしまった15年の世界選手権の借りもしっかり返した。

 表彰台でははじける笑顔だったが、日の丸が掲げられる際には感極まってうつむき、涙を流した。再び正面を向くと、君が代を口ずさみ、最後は再び笑顔になった。「前日の3人が(表彰台で)どんな景色を見ているのかなと思ってて、すごくいい景色でした。日本の国旗がたくさん見えて、オリンピックってすごいんだなと思いました」と実感した。

 本来は58キロ級。「打倒

 伊調馨」と五輪4連覇の女王超えを掲げて戦ってきたが、高い壁に阻まれ続けた。大学の先輩で48キロ級の今大会金メダリストの登坂絵莉に転向を勧められた。「(伊調)馨さんに挑戦できるのは自分しかいない。逃げたと思われたくない」と迷い、涙を流した末の決断だった。涙は無駄にしなかった。

 「この階級にするまでもいろいろありましたし、してからもあった中で、最初で最後のオリンピックの63キロ級をいい形で終われて良かったです」。大会後は再び58キロ級に戻して「伊調超え」に挑む意思を示していた。20年には自分の階級で、五輪連覇を目指すことになるかもしれない。「(東京五輪出場は)もちろんです。絶対に(同じ場所に)立ちます」と力強いく宣言した。

 ◆川井梨紗子(かわい・りさこ)1994年(平6)11月21日、石川・津幡町生まれ。小2の時に金沢ジュニアクラブでレスリングを始め、小6で全国少年少女選手権33キロ級3位、津幡中3年で全国中学選手権52キロ級優勝。至学館高2年で世界カデット選手権優勝、同3年で世界選手権に出場し、7位だった。至学館大入り後、13、14年の世界ジュニア連覇。2階級上げた63キロ級で挑んだ15年世界選手権準優勝でリオ五輪代表に内定。父孝人さん(48)はグレコローマンの元学生2冠で、母初江さん(46)は元世界選手権代表、妹が2人いる。160センチ。