女子1500メートルで日本記録保持者の田中希実(21=豊田自動織機TC)が、日本勢初となる同種目の五輪出場へ大きく前進した。4分8秒39で2連覇。五輪へ45位以内が条件の世界ランキングは、レース前時点で38位に位置していた。

序盤から攻めた。1周400メートルを66秒前後で押し、1人旅が続いた。「感覚に任せて走りました。押していってラストを上げたら、どこまでいけるか」。最後の1周は「後半に余裕を残すことができなかった」と反省し、記録は自身の日本記録から3秒ほど遅いタイム。表情を変えることなく「去年の記録になかなか近づけない、悔しい気持ちがある」と思いを口にした。

1500メートルに強いこだわりがあった。昨年12月の日本選手権(長距離)で5000メートルの五輪切符を獲得。1種目に集中することもできた。今季の出場レース、種目を選ぶ段階で、父の健智コーチ(50)に「覚悟しないとできないよ」と告げられた。五輪では8月2日の午前に1500メートル予選が行われ、夜に5000メートルの決勝が組まれる。田中は「覚悟を持つ」と腹をくくり、春から連戦で1500メートルのポイントを積み上げた。

兵庫・西脇工高2年時は1500メートルで全国高校総体2位。同校で表彰台を独占した。「県で頑張ったら自然と全国で戦える。その都度『あの子に勝ちたい』とがむしゃらでした。この世代だからこそ、ここまで来られた」。喜びもあったが、翌年も2位だった。昨年8月に日本記録4分5秒27を樹立。前保持者は同じ小野市出身の小林祐梨子だった。うれしさも悔しさも味わい、この種目で育った。

笑顔なき2連覇。レース後、あらためて「1500メートルの種目自体を極めたいと、常に思って取り組んでいます」と言った。ここがゴールではない。【松本航】