いよいよ東京五輪が開幕する。21日から始まるソフトボールの監督会見が20日、行われた。日本と金メダルを争う最大のライバルである米国のケン・エリクセン監督(60)は壇上でスマホを取り出し、日本の宇津木麗華監督(57)と“自撮り2ショット”をするなどリラックスムード全開だった。日本は初戦でオーストラリアと対戦(午前9時プレーボール)。宇津木監督は、エース上野由岐子(38=ビックカメラ高崎)を中心に08年北京五輪に続く連覇を誓った。

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グラウンドに立つ前の“前哨戦”は、奪還を狙う米国が仕掛けた。6カ国の指揮官が勢ぞろいした公式会見。壇上のエリクセン監督は、ポケットからスマホを取り出した。インカメを起動し、左腕を伸ばした。宇津木監督と肩を寄せ合い、パシャと自撮り。金メダルへの死角はない-。そう誇示するかのように、超余裕な立ち居振る舞いを見せた。ずっとリラックスムード。試合へ向けた準備を問われると、「外にもいけないし、映画を見るよ」と笑った。

対する宇津木監督。写真撮影を求められた時こそ笑ったが、決意に満ちた言葉を並べた。上野を信じ抜き、連覇を目指す。「彼女が日本のソフトボールを引っ張ってきた。彼女がやりやすい環境をしっかり作っていきたい。オリンピックは最後。彼女にとって、ここまでソフトボールを引っ張って来てよかったという大会にしたい」と語った。

金メダル最大のライバルは米国となるが、他も気の抜けない戦いが続く。まずはオーストラリアとの開幕戦で、いい流れを作れるかが重要。日本は後攻と決まっており、その先発マウンドに立つ投手は、東京五輪開幕を告げる1球を投げる役目も担う。数々の伝説を築いてきた上野か、2枚看板を担う藤田か。指揮官は「一晩考えさせてください。コーチの意見も聞いて、朝、結論を出したい」と明言を避けた。

13年前。08年北京五輪の「上野の413球」はソフトボールの枠を超え、日本の五輪史に刻まれる1ぺージとなった。試合会場で調整した上野は「やっと、いよいよだなって感じです。気持ちが高ぶり過ぎないようにしっかりコントロールして入りたい」。ネガティブな話題ばかりが目立った、これまでの東京五輪。紆余(うよ)曲折を経て、とうとう幕を開ける。これから先は、どんなドラマが生まれるか。【上田悠太】

○…日本と初戦で対戦するオーストラリアは、4大会連続でメダルを獲得している。3大会連続出場で主将を務めるポーターを中心に悲願の金メダルを目指す。ハロー監督は「興奮している。初戦で日本と対戦できるのが楽しみ」と語った。6月1日に海外選手団一番乗りで来日。群馬・太田市で約1カ月間半、合宿を行ってきた。宿舎と球場の往復の中、調整してきたが「過ごしやすかった」と笑顔。日本の生活にも慣れ、万全の状態で下克上を狙う。

◆日本のソフトボールの立ち位置 日本は世界ランキング1位で、米国と並び、金メダル候補。北京五輪以降の5度の世界選手権があったが、日本と米国で優勝と準優勝を分け合う形が続く。12年、14年大会は日本が制し、10年、16年、18年は米国が優勝している。

◆暑さも敵 山に囲まれた福島あづま球場は猛暑対策も重要になる。この日も気象庁によると、最高気温は36度。上野は「想像以上に暑い」と言い、肩は冷やさないようにしながら、合間にアイスベストを着用するなどの対策を施す。主将の山田は「守る時以外はなるべく日陰にいたり、頭を氷で冷やしたりの対策をする。(ベンチ)後ろは空調が効いており、一時的に避難できたら」と話した。