23日の開会式を前にして、ソフトボールは決戦が始まった。14年越しの連覇を目指す日本は21日、開幕戦でオーストラリアと対戦する。今回はテレビの前での観戦に役立つガイド。ソフトボールには野球には異なる独特なルールがいくつか存在している。「DP」、「テンポラリーランナー」、「リエントリー」など。野球の感覚で試合を見ると、「なんで!?」と疑問が発生するであろうポイントを絞って、解説する。【取材・構成=上田悠太】

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◆DP◆

「DESIGNATED PLAYER」の略で、日本語で言うなら「指名選手」となる。基本的には打撃専門の選手。しかし、野球の「DH」と違うのは、守備にも就くことができる。

守りもこなす「DP」は一般的には例外的パターンだが、日本は違う。バッティングも魅力の二刀流・藤田倭投手が初回のマウンドに立つ場合、「DP」として出場する。なぜ「投手」でなく「DP」で先発するかと言うと、理由がある。「DP」は「DH」同様、試合前に選ばなかったら、試合途中から発動することができない。もしも、藤田を「投手」で先発させて、継投が必要になった場合、セ・リーグのように、打撃が苦手の救援投手が打順に組み込まれることになる。あらかじめ藤田を「DP」で1回からマウンドに立たせ、「FP」(後述)にリリーフを配置しておくことで、それは回避できる。藤田は降板しても、打撃に専念する「DP」で試合に残り、引き継いだ投手は打席に立つ必要もなくなる。

◆FP◆

打席には立たず、守備だけを専門とする役割の選手。高いレベルの試合では、ピッチャーに採用されるのがほとんど。そのため「FIRST PITCHER」の略かとも勘違いされやすいが、「FLEX PLAYER」の略。

◆リエントリー◆

野球はベンチに下がれば、もう試合には戻れないが、ソフトボールは少し違う。スタメン出場した選手は、いったん試合から退いた選手も、1度だけ再出場できる。ただし、あらためて出場をする場合、自分の元の打順を引き継いだ選手と交代しなければならない。もしも、それを間違え、相手からアピールがあると、違反選手と監督が退場となる。

◆テンポラリーランナー◆

「2アウト」&「捕手がランナー」の条件が揃った時、発生する。“臨時代走”のように、捕手の走者を代えることができる。その際、出場するのは塁上にいる選手以外で、打順が最後に回ってくる人になる。例えば、2死から7番打者が出塁、8番を打つ捕手の選手も出塁し、テンポラリーランナーを使うとすると、6番打者が代わることになる。プロテクターなどの防具の着用に時間がかかる捕手が、早めに次のイニングに備えられ、試合のスピードアップを図るルール。必ずしも使う必要はない。

◆ダブルベース◆

一塁ベースは2つ存在している。野球と同じようにフェアゾーン側にある白いものが1つあり、その隣のファールゾーンにもオレンジ色のベースが置かれる。ソフトボールは塁間が18・29メートルと野球の約3分の2の距離。そのため過去には守備側と打者走者が衝突し、大けがをするケースが見られた。接触を防ぐ目的で、94年世界選手権から採用された。原則として、守備側の選手は白色ベースを、打者走者は駆け抜ける時、オレンジベースを使用する。打者が長打を放った場合は、白色ベースを踏んで、次の塁を狙ってもよい。

◆リードNG◆

走者は投手の手からボールが離れるまで、ベースについていなくてはならない。もし、投手が投げる前に、走者がベースから離れ、リードをするとアウトになる。これを「離塁アウト」と呼ぶ。盗塁を試みるには、ピッチャーが投じた後にスタートを切る必要がある。

◆タイブレーク◆

ソフトボールは7回まで。同点の場合、8回からは無死二塁で攻撃が始まる。打順は継続で、走者は前イニングで最後に攻撃を完了した人。

◆ネクストバッター◆

野球は自軍のベンチ近くにあるサークルで待つが、ソフトボールは異なる。打席中のバッターが右ならば三塁側、左ならば一塁側で、次打者は待機する。フィールドが狭いことと、逆方向へのファウルが多いため、直撃による事故防止のため。

<距離の違い>

投手―本塁間 ソフトボール=13.11メートル、野球=18.44メートル

塁間 ソフトボール=18.29メートル、野球=27.431メートル

本塁―二塁間 ソフトボール=25.86メートル、野球=38.795メートル

本塁―外野フェンス ソフトボール=五輪では67.1メートル