日本が延長8回、タイブレークの末に3-2でメキシコにサヨナラ勝ちし、1次リーグ2連勝を飾った。最大の立役者は、チーム最年少20歳の後藤希友(みう)投手(トヨタ自動車)。2-2の同点とされた7回表無死一、二塁から、この日39歳を迎えた先発・上野由岐子投手(ビックカメラ高崎)の2番手で登板し、勝ち越しを許さず。無死二塁で始まるタイブレークの8回も、3つのアウトを三振で奪い無失点。負ければ金メダルへ崖っぷちにもなる状況でチームを救った。

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数々の窮地を救ってきた39歳上野は、限界を迎えていた。投げるたびに大きく肩で息をする。同点を許した中前打も、記録はヒットだったが、主将の37歳山田がライナーを捕り損ねたものだった。大黒柱の2人が唇をかみしめる-。救ったのは20歳の左腕だった。

2-2の7回表無死一、二塁。流れを失う中、上野から譲り受けたマウンドに後藤は立った。「1点も取られてはいけない」。初球の気持ちが入った直球に、8番サンチェスは力ない捕飛を打ち上げた。続くピンチは直球とチェンジアップを織り交ぜ、2者連続三振に仕留めた。無死二塁からの延長8回タイブレークも圧巻。内野安打などで無死二、三塁となったが、3番ゴンザレス、4番を空振り三振。5番ブロークシレは歩かせたが、6番ビダテスには外角低めにチェンジアップを決め、ホームを踏ませなかった。6個のアウト中、5つが三振だった。

サヨナラを呼ぶ、最高の仕事を果たし「今日は上野さんの誕生日。必ず勝ちをプレゼントしたかった。野手が点を取ってくれると信じ投げられた」と喜んだ。宇津木監督は「昔の上野に見えた。いずれ日本を背負う投手にしたい。最高の投球でした」と目を細めた。

日常に最高の手本がある。所属先には米国代表エースのモニカ・アボットがすぐ近くで投げている。代表合宿に行けば、上野がいて、ストレッチもペアを組む。「トヨタはモニカ、代表は上野さんが目の前にいる。その経験は自分しかできない。すごいと思うことが毎日ある。その背中を見て近づいていけるようにと思う」。登板前の心の整え方、修正力、チェンジアップの精度。世界屈指の投手から得た糧は数知れない。

代表の投手は3枚。上野、藤田と違って左腕の点と若さを買われ、3枠目で滑り込んだ。先輩投手を支え、ワンポイントを想定されていたチーム最年少が救世主となった。【上田悠太】

 

◆後藤希友(ごとう・みう)2001年(平13)3月2日、名古屋市生まれ。野立小ではソフトボールとバスケットボールをプレー。日比野中、東海学園高時代から有名だった直球の最速は110キロ超。18年日米対抗選手権には高校生で代表入り。日本リーグでは、19年に7勝0敗で防御率1・72、20年は5勝0敗で防御率1・42。今季は3勝2敗で防御率1・34で、5月にはノーヒットノーランを達成。趣味はスノーボードで、ニックネームは「ごっちゃん」。左投げ左打ち。174センチ。

 

◆日本の1次リーグ展望 6チーム中、上位2チームが決勝へ進出する。そのため目標とする金メダル獲得には、1次リーグは全勝、もしくは1敗までしか許されない。2敗となると他チームの結果待ちとなる。そのため最終戦で対戦する最大のライバル米国との対戦までは、全勝をキープすることが大前提となってくる。世界ランキングでは米国が1位、日本は2位。25日の第4戦で対戦する同3位のカナダ戦が、金メダルへの1つのポイントとなりそうだ。