巨人の「未来のエース候補」が、侍ジャパン相手に存在感をアピールした。21歳の直江大輔投手が先発。立ち上がりこそ初回無死一塁からの犠打を一塁に悪送球するなど乱れたが、3番吉田正の併殺間による1失点で切り抜けた。2回以降は追加点を与えず、5回を67球、4安打1失点と好投。後半戦の先発ローテーション入りへ、これ以上ないアピールを決めた。

マウンド上での所作は、プロ未勝利の21歳とは思えないほど落ち着いていた。1回こそ自らの失策で傷口を広げて先制点を許したが、ばたついたのはそこまで。「全員がすごすぎるので。逆に全部力を入れていってもダメだろうと」。2回以降は捕手小林のミット目がけ、表情を変えることなく丁寧に投げ込んだ。4回1死から柳田、菊池涼、村上と、回をまたいで3者連続三振。5回を無四死球の1失点と持ち味を存分に発揮し「力試しとして、持っているものを全部出せたらいいなと思って臨みました。感触的にはあんまりよくないところもあったんですけど、誠司さんのリードがすごくよくて何とかなったかな。満足はしていないんですけど初めて5回も投げ切れましたし、後半につながるものも出せたんじゃないかなと思います」と振り返った。

結果に加え、大きな収穫も得た。3回2死二塁、4番鈴木誠には内角高めのつり球などを突っ込んだうえで、最後はスライダーで体勢を崩して遊ゴロに仕留めた。「内側のボールを見せたりして、コーナーを広く使えていた。内を見せるというのは世界の舞台で戦う人たちにも使えるんだなと実感したので、すごく収穫でした」。逃げずに攻め込む重要性を、強打者ぞろいの侍相手に再確認した。

夢も広がった。日本代表の先発田中将は、小学生時代からその勇姿を見てきた存在。投げる姿を目の前で初めて見て「素直にかっこいいなと思いました。投球が全部低めに集まっていて、余裕のあるピッチングをされているなと思いました」と視線を奪われた。

だが、最もくぎ付けになったのは、マウンドに刻まれていた「足跡」だった。「僕は三塁側から投げるんですけど、田中さんは結構一塁側から投げていた。こんな端から投げるんだと」とプレート位置に着目。「今後、球種が増えたりして、ツーシーム系とかが使えるようになったら、そっちから投げることもあるのかなと思いました」と、未来予想図を描いた。

直江は20年に3試合で先発するなど将来を期待されたが、同年10月に椎間板ヘルニアの手術を受け、育成契約を結んで治療に専念。リハビリをへて6月下旬に支配下に復帰し、未来のエースにと大きな期待を背負う。「ジャイアンツで活躍する目標を持っていけば、常に目標を高く持っていきたい。選ばれるようにしっかり頑張りたい」。まだ21歳。日本代表と堂々と向き合って得た1つ1つが、すべて未来への糧になる。