悲願の金へ-。ソフトボールの日本は27日、米国との決勝に挑む。

すでに決勝進出を決めて臨んだ26日の1次リーグ最終戦は、宿命のライバルに1-2のサヨナラ負けを喫したが、メダルの色は最後に決まる。米国のモニカ・アボット、キャサリン・オスターマンの両投手は難攻不落で、チーム防御率は0・00。1点が大きな意味を持つ最終決戦に、上野由岐子投手(39=ビックカメラ高崎)が競技人生の全てをぶつけて登板する。

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決勝の“前哨戦”はベンチから見つめた。上野は試合に出場せず、ブルペンにも入らなかった。米国の打者1人1人を観察し、試合中は先発した藤田と情報交換。正捕手の我妻も含め温存の形で、27日夜の決勝の舞台に立つイメージを高めた。試合後、最終決戦に向け、先発が濃厚な上野は「すごくいいデータが取れた。やるべき相手が分かっているし、準備をして、ベストパフォーマンスをするだけ」と意気込んだ。

1点の重みが大きい。米国の剛速球左腕アボットは18回で被安打4、世界一のドロップを持つ左腕オスターマンは12回2/3を投げ、被安打2。ともに自責点は0。チームの2失点は、無死二塁から始まるタイブレークでの押し出し四球と、パスボールによるものだ。

ロースコアの展開は必至。1球の失投も命取りとなりかねない。この日もサヨナラを決められたのは7番スチュアートの本塁打だった。上野は「(米国打線は)上位、下位関係なく、長打を打てる。しっかりホームランを打たれないように、丁寧に投げていきたい」。そう意識を高めた。

13年前の北京五輪。準決勝で延長9回147球を投げ、その約5時間後に行われた決勝進出決定戦では延長12回171球を投げた。その翌日の決勝だった。今回は、決勝前日の登板を避けられた意味も大きい。「特別なことをするつもりはないが、後悔のないように投げていきたい」。モチベーションの維持に苦しんだ時も、故障で引退を考えたこともあった。だが、39歳になった今もエースであり続けてきた。その競技人生の全てをぶつける。総決算の投球で、歓喜の金を呼び込む。【上田悠太】