侍ジャパンが4番鈴木誠也外野手(26)の復活弾から、五輪3連敗中だった米国との決勝トーナメント初戦で延長10回サヨナラ勝利をもぎ取った。3点を追う5回、鈴木誠の東京五輪初安打初アーチから反撃を開始。9回裏に1点差を追いつくと、タイブレークの10回を栗林良吏投手(25)が3人斬り。最後は10回裏、途中出場の甲斐拓也捕手(28)がサヨナラ打を決めた。次戦は4日午後7時から宿敵韓国と準決勝を戦う。

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鈴木誠也がほえた。横浜の夜空に大飛球を打ち上げた瞬間、確信した。「つなぐ意識で打席に入った結果、最高の形になって良かった」。反撃ののろしをあげる白球が、無人の左中間席上段に跳ねる。走りだした4番は両手をバシッと重ね合わせ、胸の内にため込んだ感情をあらわにした。

3点を勝ち越された直後の5回裏無死。元日本ハム右腕カーターの150キロをかち上げた。五輪12打席目の初安打は特大アーチだ。7月下旬の強化合宿中から不調を自覚。「最悪です」「もうクソです」。それでも心は折らなかった。4番を託してくれる首脳陣、仲間の思いに応えたかった。

いち野球人として、偽らざるマインドを明かしたことがある。

「チームのために。それが野球の楽しさなんだと感じる。個を突き詰めるだけだとつまらないし、しんどい。そういう考えが、結果的に成長につながる」

東京五輪開幕後、「Hランプ」がともらない間も独りよがりなプレーは一切見られなかった。「あまり欲しがらず…」。空振りを誘う変化球に我慢する。隙あらば二盗も決める。そんな姿勢に、仲間が気づかないわけがない。この日は2四球でも得点につなげた。1点を追う9回裏1死ではフルカウントから四球を奪い、同点のホームを踏んだ。その瞬間、4番を迎える三塁ベンチは沸きに沸いた。

母校の二松学舎大付が3年ぶり4度目の夏甲子園を決めた日。先輩も待ちに待った「きっかけ」をつかんだ。延長10回裏、甲斐のサヨナラ打が飛び出すと、村上と抱き合って大はしゃぎ。「久しぶりに興奮する試合で楽しかった。このままスキを見せないようにしっかり頑張っていきたい」。悲願の金メダルへ、日本の4番がこれで終わるとは思えない。【佐井陽介】

▼日本浅村(9回右前打でつなぎ同点を演出)「(鈴木)誠也が(四球で)塁に出てくれたので、なんとかつなぎたいなと思ってました。結果的に4度出塁できたし、いいつなぎができました」

▼日本金子ヘッドコーチ(逆転勝利に)「(鈴木)誠也が流れを変えたし、大野(雄)にしても栗林にしても、完全に舞台を整えてくれた。とどめが(犠打を決めた)栗原。タイブレークに入った瞬間から栗原を呼んで、栗林が2点以内に抑えたらいくと伝えていた」

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