東京五輪の女子ボクシング・フェザー級で金メダルに輝いた入江聖奈(20)に続き、フライ級の並木月海(22=自衛隊)は4日、準決勝に登場する。すでにメダルは確定しており、目指すはもちろん、表彰台のてっぺんだ。

並木は右手を前に突き出すサウスポースタイルで、相手の動きを封じる右ジャブがストレートのように鋭く重い。このファイティングスタイルは、千葉・旭市のキックボクシングジム「KUNISNIPE旭」(通称・旭ジム)で培った。

キックボクシング界で「神童」と呼ばれる那須川天心(22)とは幼稚園時代から空手ではライバルだった。独特の動きをする那須川に勝利したことがなく「打倒天心」を誓って小学3年でキックボクシングを習うことを決意。住んでいた成田市にはジムがなく、両親が車で1時間の場所にある旭ジムを探してきた。

同ジムの加瀬大策会長(45)は「那須川に勝ちたいという気持ちが強かった。動きが読めない那須川にはキックボクシングが必要だと思ったらしい。とにかく負けず嫌い」と話した。右利きながらサウスポースタイルにしたのも加瀬会長の指導だった。

ところが中学入学と同時に「格闘技をやめたい」と相談されたという。加瀬会長は「月海も女の子。ベンチプレスで軽々と60キロを上げることできたんですが『腕が太くなる』と泣きそうな顔で打ち明けられた。月海にとっては戦うことよりもオシャレの方が大事な時期だったのかも」と振り返り「でもね、1年したら普通の女の子に飽きたみたいで、格闘技の世界に戻ってきましたけど」と笑った。

最後に加瀬会長は「口出しはできないけど」と断った上で「金メダルをとるための戦略もあるかもしれないが、勝てると確信したときに終盤で流すような動きをみせる。全力で相手を倒すという月海らしいファイトをみたいですね」とメッセージを送った。【寺沢卓】