ボクシング女子フライ級で並木月海(22=自衛隊)が銅メダルを獲得した。

準決勝でストイカジェリャスコバ・クラステバ(35=ブルガリア)に0-5の判定で敗れ、3位決定戦がないため表彰台が決まった。空手仕込みの独特のスタイルを貫き、初出場で存在感を放った。3日に金メダルに輝いたフェザー級の入江聖奈(20)に続く日本女子2人目のメダルとなった。

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鋭い出入り、懐に飛び込んでの小気味良い連打。153センチの小柄を武器に代える並木のボクシング。敗色濃厚となった3回の終盤でも、そのスタイルを貫いた。「本当は金をとって、小さくても取れるところを見せたかった」。採点結果を聞き、口を結んだ。

「今大会は1回は全部取ってて、今日は取れなくてテンポが崩れた」。初回が勝負の分かれ目だった。リーチが長い相手に、抜群の瞬発力で距離を詰めにいくが、巧みなバックステップで迎撃された。「きれいな形で当たっているように見られた」と18年世界選手権銀メダリストに苦戦。1、2回と落とし、勝負あった。

小柄な倒し屋。ルーツは空手にある。「拳が硬くなった。それがパンチ力に生きている」。幼稚園で極真空手を始め、拳立てふせなどで鍛えた。素手で殴るため、子どもは間違った部分で当てるとケガをする。安全面から、人さし指と中指の付け根で当てるように指導を受けた。これで正確に力を伝える基礎を作った。

「至近距離でもがっつり打ち合う。近づいてからの当て感みたいなものはその時の経験が生きている」とも言う。グローブでは感じられない小さな拳をめり込ませる感覚。指導していた小宮良介さん(40)は「ピンポイントで来る。刺さる感じ」と懐かしむ。

最初の大会決勝の相手が現在のキックボクシング界の「神童」那須川天心だった。「一瞬で倒された」と本人は思い返すが、実際は違った。那須川が開始直後に一発で試合を終わらせていた跳び膝蹴りを、見事によけた。驚きの身のこなしは、現在の軽快なステップワークにも通じている。

「やってきたことは間違ってなかった。胸を張って言える」。他選手に類を見ない独特のスタイルは、銅メダルに導いてくれた。ただ、悔しさはある。「正直なところ目指すつもりなかった。あと3年、もっと努力をしたら金メダル取れるのかな」。小さくても世界一になれる証明は、24年のパリで。【阿部健吾】

◆並木月海(なみき・つきみ)1998年(平10)9月17日、千葉県成田市生まれ。4人きょうだいの末っ子で、姉と兄2人の影響で幼稚園の年中から空手を始める。中学入学時に「普通の女の子として過ごしたい」と格闘技から離れたが、「飽きてしまった」と1年後にボクシングを開始。花咲徳栄高から自衛隊に進み、18年世界選手権銅など。右利きのサウスポー。153センチ