発明家のドクター・中松氏(本名・中松義郎=93)が、東京オリンピック(五輪)開会式前日の22日、日刊スポーツの単独取材にオンラインで応じ、多くの競技が無観客開催となった状況を解消する新発明「有観客様無観客システム」を完成させたと明かした。既に特許申請しており「あたかも有観客のように見えるが、実際には無観客。簡単に言えば観客席に観客の“分身”を作るということ。無観客でも選手には観客の姿が見える上、声も出るから奮い立たされる」と強調した。

中松氏は16日に都内で開いた会見で、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京都に4度目の緊急事態宣言が発出された状況を乗り切るための新マスク「ドクター・中まつく(Dr.NakaMatsk)」を発表した。その席上で、無観客の会場を観客を入れたように盛り上げられる新発明を検討していると明かした。それから1週間がたち「土日も徹夜して一気に発明を完成した。特許も申請した」という。

中松氏によると「有観客様無観客システム」は、観客席の肘掛けに乗るくらいの小さい装置で、競技場の外にいる観客と競技場内をオンラインでつなげるという。装置と観客は同期しており、観客は装置に付いているカメラを通じ、走っていく選手やボールの動きを目で見るのと同じように追うことが出来るという。さらに映像を映し出す機能があり、競技場の外や遠隔地にいる観客の姿を、競技場内に像として映し出すことが出来る。音声を発する機能もあり、声援を送ることが出来るため、無観客ながら有観客さながらの雰囲気を競技場内に作ることが出来るという。

中松氏は「コロナ禍がひどくて、政府は無観客開催を決めた。一方、IOCはスポンサーの利権も絡んでいるだけに観客を入れたいから、バッハ会長が有観客の希望を申し入れている。双方の考え方には隔たりがある」と強調。その上で「もちろん選手は観客を入れることによって、激励されるので良い面がある。観客も、切符をキャンセルするマイナスを避けることが出来る。無観客で有観客にするという、五輪史に残る発明で全くかみ合っていない両者を満足させることが出来る」」と胸を張った。

東京五輪は翌23日に開幕し、17日間の日程だが「有観客様無観客システム」の生産は間に合うのだろうか。中松氏は「私の場合、単なるアイデア、発想ではなく、現実に出来るから発表する。やるぞと言われたら出来る。1日で出来る」と豪語した。その上で「菅首相、IOCのバッハ会長が『やろう』とひと言、言えば私は1日で用意できる」と訴えた。

怒りすらにじませる裏には、東大の後輩にあたる西村康稔経済再生担当相(58)の対応への不満がある。中松氏は16日の会見後、1カ月ほど前に西村氏の要請で大臣室で面会。その際、新型コロナウイルスには強大なエネルギーがあり、マスクなどで、まん延を防止しようとするのは到底不可能で、巨大なエネルギーから守る個人防御具を全員つけることが解決策という「コロナエントロピー理論」について説明。と重ねて強調した。西村氏は「すごい。素晴らしい」と絶賛した一方で、1つも実行に移さなかった。

その後、西村氏は酒類提供停止に応じない飲食店をめぐり、金融機関経由の自粛働き掛け方針や酒類販売事業者への取引停止要請を出し、撤回に追い込まれた。その一連の動きを踏まえ「良いアイデアを出しても、やろうと言ってくれないと動かない。首相とIOCトップがやると言ってくれないと形にならない」と繰り返して訴えた。【村上幸将】