マスターズ王者で日本の松山英樹(29)が、金メダルを射程圏にした。第3ラウンド(R)を5バーディー、1ボギーの67で回り、通算13アンダーの200で首位と1打差2位。気温30度超えの猛暑の中、順延した第2Rの残りを含む計20ホールを戦い抜き、五輪初制覇へ近づいた。偶然にも首位シャウフェレ(米国)とはマスターズと同様、第3日と最終日が同組。1日の最終日、マスターズの再現で頂点に立つ。

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松山の視線の先に、金メダルがくっきり見えた。雷雨に見舞われて何度も中断した前日までの2日間から一変し、快晴。気温30度を超える猛暑のラウンドは伸ばし合いになった。出だしの1番はまさかのボギー。集中力は切らさず、2番、3番と連続バーディーですぐに取り返した。松山が伸ばせば前日首位のシャウフェレ、同2位のオルティスらも食らいつく展開。ショットでミスしても抜群のアプローチで崩れず、2位で一進一退の攻防を終えた。

順延した前日の残り2ホールを午前7時45分からこなし、午後4時ごろまで計20ホールを回った。7月2日に新型コロナウイルス感染が判明し、ほぼぶっつけ本番で臨む五輪。順延は「よくあること」と気に留めなかったが、真夏の日差しは病み上がりの体を苦しめた。

「体力的にまだ戻りきってないので、しんどい部分もありました」

思うように体が動かず、後半はうまくチャンスを作れなかった。それでも「それは言い訳でしかない」と言い切り、終盤の17番ではバンカーからの第2打をグリーンの傾斜を使って約1・5メートルに寄せる技ありショット。後半、唯一のバーディーにつなげ「気力でカバーしたい」と語った通りの意地をみせた。

マスターズの再現でもある。この日、同組で首位のシャウフェレは同大会でも第3日、最終日と共に回り、最後まで優勝を争った相手。あの時は松山が4打差リードで最終日を迎えたが、今回は追う立場。シャウフェレは「明日はベストを尽くす」と静かに語り、松山も「絶対勝つという気持ちでくると思う。負けないようにしっかり準備して頑張りたい」と力を込めた。

上位は首位と3打差以内に8人がひしめく大混戦で、メジャー4勝のマキロイら実力者が多く名を連ねる。だが会場の霞ケ関CCは、松山にとって縁起のいい場所だ。高知・明徳義塾高3年で出場した09年日本ジュニア選手権男子15~17歳の部とその翌年、東北福祉大1年で出場したアジア・パシフィックアマチュア選手権で日本人として初優勝。メダル争いを繰り広げる理由を問われると「分からないですが、日本でやっているからうまくいっているのかな」と語った。

最終日も猛暑が予想されている。

「ここまで3日間(体力が)もってくれたので、明日1日だけでも、もってくれたらなと思います」

残り18ホール、マスターズに続く金メダルへ。真っ黒に日焼けした顔で、最終決戦を見据えた。【松尾幸之介】

◆五輪ゴルフの順位決定方式 メダルに絡む順位の選手が並んだ場合はプレーオフ(PO)で決定する。金、銀、銅(1~3位)を決めるため仮に1位に2人、3位に5人など複数選手が並んだ場合は、金、銀メダルを懸けたPO、銅メダルを懸けたPOが実施される。いずれの場合もメダルは金1個、銀1個、銅1個のみが授与される。大会は60人が4日間72ホールで争い、予選落ちはない。

◆21年マスターズVTR 4月のマスターズで松山とシャウフェレは第3日、最終日と同組(2サム)で優勝争いを演じている。第3ラウンドを終え松山が通算11アンダーの首位、シャウフェレが4打差2位。最終日の15番でシャウフェレはバーディーを奪い、ボギーの松山に2打差と迫り、続く16番パー3でホールインワン狙いの勝負に出た。しかし、ティーショットが池に落ちトリプルボギーとなり勝負が決した。当時世界ランク5位だったシャウフェレは、松山を「ミスのない素晴らしいプレーで王者の戦いぶり」とたたえた。

【マスターズ制覇後の松山】

◆4月11日 マスターズで日本人初優勝を達成。

◆同30日 首相官邸で内閣総理大臣顕彰を授与される。

◆5月23日 全米プロ選手権で23位。

◆6月20日 全米オープンで26位。

◆7月2日 新型コロナウイルス感染が判明し、出場中の米ツアー大会を棄権。

◆同11日 全英オープン選手権欠場を発表。

◆同13日 練習再開を、早藤将太キャディーがSNSで報告。

◆同24日 会場の霞ケ関CCで練習。コロナ観戦後、初の公の場となる。