マスターズ王者で日本の松山英樹(29)は惜しくもメダル獲得を逃した。5バーディー、3ボギーの69と伸ばし、通算15アンダー、269で7人が並んだ3位に入り、銅メダルをかけたプレーオフ(PO)へ突入。その1ホール目でパーを取れず敗退した。首位で出たシャウフェレ(米国)が18アンダーで金メダル、1打差のサバティーニ(スロバキア)が銀メダルを獲得した。銅メダルはPOを4ホール目で制した潘政琮(台湾)。星野陸也は6アンダーの38位だった。

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松山の戦いが終わった。3位で7人が並び、銅メダルをかけて臨んだプレーオフ。パー以上が必要な状況で放った第2打は無情にもグリーンを越え、ラフ深くにはまった。具体的なことは言わなかったが「ジャッジミスだった」と一言。続くアプローチは約4メートルオーバー。思いを込めたパーパットも外れ、敗退が決まった。

見守っていたボランティアから悲鳴交じりの声が聞こえる中、落胆した表情を浮かべ、静かに引き揚げた。初めて戦った五輪の舞台。「メダルを取りたいという思いは強かったので悔しいですね」。厳しい顔で、にじんだ汗をぬぐった。

最後まで金メダルを狙っていた。優勝したシャウフェレと一時は5打差まで離されたが、後半の11、12番で連続バーディーを奪うなど粘り、14番終了時点で1打差に。「あがり3つ取れればいけると思っていた」が、15番で約1メートルのパーパットを外して追い込まれ、残る3ホールも全てパー。最終18番は約3メートルのバーディーパットを沈めれば銅メダルという状況で決めきれなかった。「なかなか詰めがうまくいかないとこういう結果になると改めて思った」とうなだれた。

それでもマスターズ覇者として、日本の代表として、力は示した。大会前には新型コロナウイルスに感染して調整も狂った。感染後の試合出場はかなわず、体調も万全ではなかった。「結果が全て」と言い訳はしなかったが、丸山茂樹コーチは「(五輪前に)軽く流せる試合があって出られたら大きく違っていたかも」とかばった。

今大会も多くの有力選手が出場を辞退するなど、ゴルフは五輪よりもメジャーなどが重要視される世界。松山も「マスターズの方が比にならないぐらい緊張していた」と振り返ったが、「グリーン上だけ、かなりプレッシャーを感じてましたね」と本音を漏らした。連日、ニュースを見て日本初のメダリストを目指す気持ちを高めていたという。3年後のパリ大会出場は明言しなかったが「それでも経験できたことは良かった」と初の五輪を締めた。