体操男子で五輪2連覇の内村航平(32=ジョイカル)が14日、東京五輪代表選考となるNHK杯(長野ビックハット)の前日練習に臨んだ。

種目を鉄棒に絞り、狙うのは個人枠での自国五輪出場。4月の全日本選手権では2つの演技で19年世界選手権金メダリストの得点を大きく上回る快演を披露し、幸先良いスタートを切っていた。第2戦を控え、「本当に日に日に五輪には近づいているんですけど、そこまで意識しているより、1試合1試合、満足したものを出したい方が大きい。そこまで全日本から期間なかったですけど、しっかり調整して挑めている。そのまま出し切りたい」と抱負を述べた。

全日本後にはアジア選手権の中止が決まり、最大2枠だった国内選考会で決まる個人枠が1枠になった。「率直に言うと、だいぶ厳しい戦いになるな。でも、もともと、個人枠であろうが、団体であろうが、厳しい戦いになるのはどちらでも変わらない。そこまで影響はないですね。自分にとっては」と見定めた。

先日、IOC(国際オリンピック委員会)が東京五輪の各選手団に新型コロナウイルスのワクチンを提供すると発表した。世論ではさまざまな意見が飛び交い、開催の不安視する声もあるが、「もう僕の中では考えないようにしてます。あるとかないより、五輪を目指す立場で、あるかないかはかなり大事な問題ですが、そもそも僕は好きで体操を始めてここまでやってきた。目の前の練習と開催される試合に全力でやるだけかな。考えた先にたどり着きましたね。そこまで精神的に影響することでもなく、そこまで気にしていることでもないかなと思っています」と、ここでも泰然とした態度を示した。

開催の是非などについては心を砕く時期もあったという。しかし、自然に考えはまとまっていった。「まだ僕は東京五輪の代表ではないので、あるかないかを議論する立場でもないかな。あと、選手で決められることではないので、そこを議論しても僕たち選手には変える力がないのでどうしょうもできない。だから目の前のできることを。体操選手なので、やること、練習すること、試合にでることを仕事としてやっているので、そこをちゃんとできてないとそこに立つ権利もない。議論している暇があったら練習しようと」。

いま求めるのは「自分の満足する演技」。6種目を演技してた時代に比べ、1種目にしぼったからこそ、理想を体現できるチャンスは多くなったと見る。「思い返すと、自分の満足した演技は少ないと思っている。そこを追求してやるし、やってこれているので、そこにすべてをかけてやりたい」と内村ならではの境地へと向かう。

◆個人枠の代表選考 6種目のスペシャリストが最大で2枠を争う。内村が該当する枠は1枠で、全日本選手権、NHK杯(5月、長野)、全日本種目別選手権(6月、高崎)の3大会の選考会で代表権がかかる。各演技の得点を国内外の大会での得点を元にして日本協会が作成する世界ランキングにあてはめ、順位ごとにポイントを与え、5試合の総合ポイントで競う。1位かつ0・2点差以上は40点、1位は30点、2位は20点と続く。6種目の中で1位になった選手が代表に決まる。