全日本柔道連盟(全柔連)は27日、東京・講道館で強化委員会を開き、女子52キロ級で18、19年世界女王の阿部詩(19=日体大)や男子73キロ級で16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)金メダルの大野将平(28=旭化成)ら男女12人を東京五輪代表に決めた。この日までに男女13階級が決まり、男子66キロ級は19年世界王者の丸山城志郎(ミキハウス)と17、18年世界王者の阿部一二三(日体大)が混戦で、最終選考会の全日本選抜体重別選手権(4月4~5日、福岡)で最終決着をつける。

柔道界のヒロインが、初の夢舞台への切符を勝ち取った。紺色のパンツスーツ姿で会見場に登場した阿部は、報道陣約180人を前に、凜(りん)とした表情で5カ月後の大舞台へ決意を示した。「ようやくスタートラインに立てた。人生最大の目標である東京五輪金メダルへ、人生をかけて戦いたい。東京五輪では一番強い自分を見せたい」。代表争いを繰り広げてきた志々目愛と角田夏実(ともに了徳寺大職)へ感謝の気持ちも伝え、2人の強い意志も胸に「日本代表として強い覚悟と責任を持って臨む」と、日本武道館での大勝負を見据えた。

会見前の強化委員会では、投票者28人の満場一致で文句なしの代表入りが決まった。世界選手権2連覇や昨年11月のグランドスラム(GS)大阪大会決勝まで対海外勢48連勝などの実績が高く評価された。直後、女子代表の増地克之監督から「ここからが勝負だ。ともに五輪で戦おう」と連絡があった。

この日は、父浩二さんの50歳の誕生日だった。「(五輪内定が)最高のプレゼントになったかな。両親には感謝の気持ちしかない。恩返しのためにも、次は五輪の金メダルを首にかけてあげたい」と誓った。

男子66キロ級元世界王者の兄一二三より一足先に五輪代表に決まった。7月26日に行われる兄妹での五輪金メダルを夢見て、こう願った。「私に出来ることはお兄ちゃんを信じること。お兄ちゃんなら絶対に決めてくれる。2人で目標にした東京五輪は一緒に挑みたい」。19歳の柔道家は、夢実現へ向け、熱い思いを口にした。【峯岸佑樹】