東京オリンピック(五輪)柔道代表の男女14階級で唯一決まっていない男子66キロ級代表決定戦は13日、東京・講道館の大道場で行われる。19年世界王者の丸山城志郎(27=ミキハウス)と17、18年世界王者の阿部一二三(23=パーク24)が、日本柔道史上初の「ワンマッチ」で決着をつける。異例の一騎打ちで勝者が五輪代表に決まる。無観客で実施される“令和の巌流島決戦”が、ついにその日を迎える。

新旧世界王者が決着をつける時が来た。国内だけでなく、世界中の柔道ファンが注目する世紀の一戦。両者はこれまで鍛錬を重ね、けがもなく万全な状態で決戦の日を迎える。2人は12日夜の計量もクリアし、新型コロナウイルスのPCR検査も陰性だったという。

2人の直接対決は、丸山の4勝3敗とほぼ五分。全7試合中6戦が延長にもつれた。昨年は、丸山が4月の全日本選抜体重別選手権と8月の世界選手権を制し、阿部が11月のグランドスラム(GS)大阪大会で雪辱を果たした。

拮抗(きっこう)する両者だが、柔道スタイルは対照的だ。内股やともえ投げを武器とする丸山は、スロースターターでスタミナが豊富のため後半に強い。背負い投げや袖釣り込み腰などの担ぎ技を得意とする阿部は、パワーファイターで前半に強く一気に勝負をつける。

過去7戦はトーナメントで、1試合平均7分34秒と長期戦だったが、今回は1試合限定だ。一本勝負のため、ペース配分を考えなくていいため序盤でいかに主導権を握れるかが重要になる。また両者とも実戦から1年前後離れている。当日の準備や気持ちの作り方もカギになるだろう。

丸山はコロナ禍での決定戦に配慮しつつ「今、自分にできることは多くの方に感謝の気持ちを忘れずに戦うこと。強い気持ちで戦う姿を伝えたい」と激闘を誓う。一方、阿部は「試合に向けて勝つ準備をしてきた。豪快な一本を取りにいく自分の柔道をして勝ちきり、五輪代表内定を必ず決める」と決意を込めた。

五輪決勝に勝るとも劣らない運命の一戦。名勝負にひとつのピリオドが打たれる時が来た。【峯岸佑樹】

◆選考 柔道の東京五輪代表選考で、全柔連は昨年11月から今年4月まで、3段階方式で各階級1人の代表を選考する方式を採用。男女13階級は2月の第2段階までに、実績や実力が飛び抜けていると判断された選手が決定した。丸山と阿部が横一線の男子66キロ級は4月の全日本選抜体重別選手権が最終選考会だったが、新型コロナウイルスの影響で延期。代替された12月のGS東京大会は中止になり、五輪までの準備期間も考慮して日本柔道史上初の1試合限定で代表決定戦を実施することとなった。