初出場の第5シード、ウルフ・アロン(25=了徳寺大職)が決勝で趙グハム(韓国)に一本勝ちし金メダルを獲得した。

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決勝はウルフ・アロンの「攻め続ける我慢」が勝利を引き寄せた。通常ならば、延長に入ると両選手ともに体力を消耗し、受けながら我慢する戦いになるものだ。しかしウルフは攻めながらチャンスを待った。これはスタミナがないとできない。自らの練習量に相当な自信があったのだろうと感じた。

攻め続ける中で、内股や肩車を仕掛けたことで、徐々に趙の重心が後ろに移行していった。そこに背後へと倒す大内刈り。勝利の方程式と言える流れだった。決勝までの全4試合、ペースを落とすことなく、攻め続けた今日のウルフは、私が今まで見た中で1番強かった。

シドニー五輪以降、男子100キロ級で金メダルが奪えなかったのは、外国勢のパワーに対抗できなかったことにある。今日のウルフはパワー負けすることなく、かつ瞬発力、そしてスピードがあった。一瞬の隙を見逃さず、技を仕掛ける速さが技のキレにつながっていた。初戦の2回戦から準決勝まではパッと相手の懐に入り、技に入ってポイントを奪った。その後はメリハリをつけて守るところは守って勝負にこだわった。もはや誰もウルフについていくことができなかった。

試合後、膝に不安があったと明かしていたが、大会前から口にしていたこと。日本代表メンバーの誰しもが何かの古傷、故障を抱えているものだ。ウルフは今日、すべてのピークを持っていく準備を整えてきたのだろう。それを金メダル獲得で証明したと思う。(12年ロンドン、16年リオデジャネイロ五輪銅メダリスト)