日本男子の井上康生監督(43)が100キロ級の日本勢で自身の00年シドニー五輪以来となる、ウルフの金メダル獲得を喜んだ。教え子は19年12月に右膝半月板を手術。以降も共に東京五輪に向けて歩んできた。後輩がつかんだ快挙を「東京五輪で優勝するために、ひた向きに、努力に努力を重ねている姿を見てきた。その日々が報われて、うれしく思う」と笑顔で喜んだ。

21年前、井上監督は東海大4年だった。開会式で旗手を務め、戦いに臨んだ。2回戦から登場し、圧倒的な強さでオール一本勝ち。ギル(カナダ)との決勝も内股で決めた。前年6月に母かず子さんが51歳で他界していた。当時53歳の父明さんは「今日はかず子の月命日。家内がこの日を選んだのでしょう」と泣いた。

井上監督は控室で受け取った、母の遺影を持って表彰台に立ち「世界一の母にするのが目標だった。世界一の母を(みんなに)見せたい気持ちでした」と喜びを分かち合った。当時、全日本男子の山下泰裕監督が「柔道家としての山下が見ても、強いと感じる」と評した強さ。シドニー五輪を象徴するシーンとして、語り継がれてきた。

ウルフにとっても、憧れの人だった。この日、井上監督は「接戦になればなるほど力を発揮する彼の強みが、しっかり出ていた試合だった。非常に我慢強く、安定した戦いだった」と評した。

思い入れのある階級。今度は指導者として、喜びをかみしめた。