初採用の混合団体で、優勝候補の日本が銀メダルに終わった。世界選手権4連覇中だったが、決勝でフランスに1-4で力負け。初戦の準々決勝でドイツに逆転勝ち、準決勝でROCに快勝。決勝は女子70キロ級新井千鶴(27)、男子100キロ級のウルフ・アロン(25)ら金メダリスト4人の布陣で臨みながら完敗した。日本は個人戦で史上最多9個の金を獲得も、柔道最終日を悔しい「銀」で終えた。

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大本命の日本が、聖地で負けた。試合終了のブザーが日本武道館に鳴り響くと、5人目の芳田が畳に倒れ込んだ。1-4。完敗だった。「絶対王者」ことテディ・リネール擁するフランスは大喜びし、観客席のチームスタッフは大合唱。日本は“本家”の意地を示せず、女子の素根らは涙した。最年長の29歳で主将を務めた大野は「フランスは強かった。責任を感じている。最後(9月で退任する)井上監督を男にすることができず申し訳ない…」と言葉を詰まらせた。

ドイツとの準々決勝では、大野、阿部詩の金メダリストが黒星を喫す波乱が起きたが逆転勝ち。ROCとの準決勝は4-0で完勝。決勝は金メダル4人を投入し、新井、向と連敗。素根で巻き返したが、ウルフがリネールに負けた。5人目の芳田は相手の圧力を受け、技出しができず苦戦。中盤に内股で技ありを奪われ、逃げきられた。

悪夢は繰り返された。57年ぶりの自国開催の大舞台。日本の「総合力」を世界に示す場だった。64年東京五輪は、柔道最終日の男子無差別級決勝で神永昭夫がへーシンクに負けた。

今でも語り継がれる屈辱を払拭(ふっしょく)しようと、一体感の醸成へ「モチベーションビデオ」を活用。全日本柔道連盟科学研究部が、試合や合宿で撮影した映像にコーチらのメッセージを加えて6分間の映像を制作した。テーマは「俺たちのヒーロー」と「今日のために」。動画はこの日の朝、選手を含めた日本チーム全員にLINEで共有された。日本代表の誇りや自覚を伝え、心を奮い立たせたが、3年後の五輪開催国に完敗。退任する井上監督は「最後は勝たせてあげたかった。素晴らしい選手たちと戦えたことを誇りに思う」と男泣きした。

57年の歳月を経て、日本の悲願だった東京五輪・柔道最終日の金メダル。

夢は、はかなく消えた。【峯岸佑樹】