男子組手75キロ超級の荒賀龍太郎(30=荒賀道場)が銅メダルを獲得した。1次リーグA組を3戦全勝で首位通過。準決勝でハメディ(サウジアラビア)に0-2で敗れて決勝進出は逃したが、3位決定戦はないため銅メダルが確定した。東京五輪で新採用された空手で、組手では男女を通じて日本初のメダルとなった。女子組手61キロ超級の植草歩(29=JAL)は1次リーグA組2勝2敗の4位で敗退した。

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苦戦が続いていた組手の最後の砦(とりで)として、荒賀が意地を示した。「スピードドラゴン」の異名を取る素早い突きを繰り出して1次リーグを無敗で通過。準決勝で敗れたものの、銅メダルを獲得。「メダルなしでは帰れないと思って畳の上に立った」。決勝に進めなかった無念の涙を流しながら、懸命に声を絞り出した。

空手道場を経営する両親のもとに生まれ、3歳のときに空手を始めた。小、中学校時代から全国大会で優勝し、高校時代には史上初のインターハイ3連覇を果たすなど、選抜大会、国体を含めて8つのタイトルを獲得。勢いに乗って出場した全日本選手権では2人の元日本チャンピオンを破り、準決勝では前年覇者の松久功と互角に近い熱戦を演じた。京産大に進んだ翌年には、19歳で史上最年少の日本一に輝いた。

父であり、師匠でもある元日本代表の正孝さんからたたき込まれたのが「逃げるな」というポリシーだ。自身2度目の世界選手権挑戦となった14年。実力的には勝てるはずの相手に対して精神面で劣勢に立ってしまい、決勝で敗れた。控室に戻ると、攻める姿勢を失ったことを見透かしていた父から一喝され、意識が変わった。

けがとも戦った。五輪出場内定をつかんだ20年1月プレミアリーグ・パリ大会では、初戦に右手を骨折。それでも五輪切符当確ラインが掛かる準決勝まで気合で勝ち上がった。今年5月の同リーグ・リスボン大会では、準決勝で足を負傷して決勝を棄権。その後の調整に狂いが生じたが、本番までに立て直した。「自分の中で東京五輪は集大成。いままでで1番強い荒賀龍太郎を見せられる舞台にしたい」と誓っていた。望んだ色ではなかったが、価値ある銅メダルだ。