東京オリンピック(五輪)の1年延期決定や合宿先となる東京・北区のナショナルトレーニングセンター(NTC)閉鎖など、バレーボール男子代表の強化が大きな変更を余儀なくされている。長年エースとして活躍した元男子日本代表の山本隆弘さん(41)が、五輪に向けた今後の代表強化策や1年延期となったメリット、デメリットを語った。

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山本さんは現役時代、サウスポーから繰り出す強烈なスパイクで得点を量産した。エースとして、日本代表を16年ぶりの五輪となる08年北京大会出場に導いた。13年に引退後は会社や一般社団法人を立ち上げ、小中学生対象のアカデミーや小学生対象の大会を企画してきた。バレーボールの楽しさを伝えながら、代表選手を担う人材の育成を目指している。

-東京五輪が1年延期となった

山本さん 中止にならなかっただけでも良かった。メリットがあるとしたら、各選手への戦術理解に時間をかけられる点だ。高さとパワーが海外と比べて劣る日本は、いかに一丸となって戦うかが大事だ。

-逆にデメリットは

山本さん 30代の選手にとって1年延びることへの影響はでかい。男子は33歳の清水と福沢、女子は35歳の荒木。アスリートはコンディションに波を作って、ピークに持って行く。チームを支える30代選手がどう気持ちを切り替えられるか心配だ。

-男子代表の活躍が著しい。昨年W杯4位に輝いたが、その要因は

山本さん W杯でベストサーバーにも輝いた西田らビッグサーバーが育ってきた。速いサーブや相手の嫌がるコースに打ち分けるサーブ。観客も重要性を実感し、強気な攻めを受け入れてる環境になってきた。

-課題は

山本さん 現役時代はとにかく体力だけは世界一にならないといけないと思っていた。フルセットの末に勝ち切る上で体力強化は欠かせない。

-エース候補たちをどう見ているか

山本さん エースとは苦しい場面でも決めきる力がある人。僕の時は勝っても負けても「山本」だった。今の代表は、各試合ごとに違う人が主役を担える。

-五輪への期待は

山本さん 多くのバレーボール選手たちにとって憧れの舞台で、見ている人たちに面白いと思ってもらえる戦いをして欲しい。選手たちのプレーが人気復活の1歩になるはずだ。【聞き手=平山連】

◆山本隆弘(やまもと・たかひろ)1978年(昭53)7月12日生まれ、鳥取県出身。中学1年でバレーボールを始め、鳥取商高から日体大進学後、パナソニックへ加入。身長201センチの高さとサウスポーから繰り出すスパイクを武器に、日本代表のエースに君臨。08年北京五輪では、16年ぶりの本大会出場へと導いた。13年に現役引退後、アカデミーや小学生対象の大会開催など後進育成に力を入れる。