国際オリンピック委員会(IOC)は20日、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの1年延期で発生する追加経費について「日本の安倍晋三首相が、既に合意した現行の契約条件下、引き続き日本側が負担することで同意した」と見解を示した。Q&A方式で意向を明らかにした。

同日、公式サイトの「Frequently Asked Questions about Olympic Games Tokyo2020(2020年東京五輪に関する、よくある質問)」を更新。「大会を延期することによる財政的な影響は何か?」との問いの項目で、新型コロナウイルス感染拡大による延期で約3000億円規模の追加コストが見込まれている問題について、言及した。

答えは「延期は、大会の開催に関わる全ての人々、特にアスリートの健康を守り、新型コロナウイルスを終息させる一助として決断された。財政的な影響を含む、大会の延期によって引き起こされる諸問題の評価はIOCの仕事になるが、日本の安倍晋三首相は、既に合意した現行の負担割合の契約条件下、引き続き日本側が負担することで同意した」とつづられた。

続けて「IOCが、その費用を分担することで合意した」とも記し、金額は「数億ドル(数百億円)」とした。ただ、今月16日に行われたIOCと大会組織委員会のトップ級幹部による事務折衝では、IOC調整委員会のコーツ委員長が「五輪運動に関わる追加経費は負担する」と説明し、バッハ会長のドイツ紙への「数億ドル負担」発言を火消しした。

あくまでIF(各国際競技連盟)やNOC(各国・地域オリンピック委員会)への支援と強調し、大会延期の追加費用に関する直接の負担については明言を避けていただけに、今回のQ&Aに出てきた「数億ドル」が指すものは不明確だ。

これにより、IOCが日本側に延期の負担を強いる姿勢を先んじて鮮明にした形だ。緊急事態宣言を全国に拡大した新型コロナ禍の対策、休業補償などの経済対策が喫緊の課題となる中で、国民の税金をIOCの主張通りに投入すれば、世論から猛反発を受けることは避けられない。

また、新規の質問として「なぜ2022年に延期しなかったのか」も掲載。「日本のパートナー(組織委やステークホルダー)と首相が、日本が遅くとも来年の夏を超える延期には対応できない、と明確にした」と日本側の都合による決断だったと、IOCの立場として明示した。