来夏に延期した東京オリンピック(五輪)の開幕1年前を記念する式典に、白血病からの復帰を目指す競泳女子の池江璃花子(19=ルネサンス)が出演することが29日、複数の大会関係者への取材で分かった。

7月23日、大会メインスタジアムの国立競技場(新宿区)に本人が登場し、新型コロナウイルスによる五輪の延期で、不安を抱える全世界のアスリートにメッセージを発信する。

   ◇   ◇   ◇

大会関係者によると新型コロナウイルスの感染防止や大会簡素化の観点から、五輪1年前のイベントは無観客で行い、報道陣のみを入れる方向で調整している。大規模イベントが実施できない中でも、全世界に東京大会としてのメッセージを伝えられるアスリートとして、池江に白羽の矢が立った。

イベントは開幕1年前の7月23日、来夏に開会式などを実施する国立競技場で行われる。その場に池江が登場し、肉声で発言する予定だ。

池江は18年8月のアジア大会で6冠に輝くなど、東京五輪で活躍が期待される選手に成長。しかし、19年2月に白血病だったことが判明し、闘病生活を余儀なくされた。それでも、SNSなどで積極的に近況を報告。同じ病気で苦しむ患者だけでなく、世界の人々を励ます投稿となっていた。

その姿に国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長はツイッターの五輪公式アカウントで「夢を諦めないで。五輪コミュニティー全体があなたを応援しています」との激励メッセージを送るなど、その影響は世界に広まっていった。

池江は今、通院を続けながらも練習を再開するまでに回復。大会組織委員会には、そんな逆境に立ち向かう池江から、延期せざるを得なかった東京五輪の1年前イベントを通じ、選手の仲間たちへメッセージを発信してほしいという思いがあった。池江が発信するメッセージは現在、開閉会式演出制作チームの内部などで検討している。

開幕1年前イベントを巡って組織委は、コロナ禍で華々しい行事は情勢にそぐわないと判断し「人を集めての特別なイベントは実施しない」という方針を表明していた。その方針は守りつつ、シンプルながらも大きな意味を持つ1年前式典にしたい考えだ。

◆池江璃花子(いけえ・りかこ)2000年(平12)7月4日、東京都生まれ。15年世界選手権で中学生として14年ぶりに代表入り。得意は100メートルバタフライで自己ベスト56秒08。16年リオデジャネイロ五輪5位、18年パンパシフィック選手権で主要国際大会初優勝。同年ジャカルタ・アジア大会で日本勢最多6冠で大会MVP。昨年2月に白血病を公表し入院。同12月に退院。171センチ、60キロ。

<池江の経過メモ>

◆19年2月4日 オーストラリア合宿中に疲労が抜けず現地で検査を受ける。

◆同8日 緊急帰国。白血病と診断されて入院。

◆同12日 自身のツイッターで白血病を公表。「私自身いまだに信じられず、混乱している状況です」。

◆同3月6日 ツイッターで「思ってたより、数十倍、数百倍、数千倍しんどいです」とつづる。

◆同4月8日 日大入学と同水泳部入部を発表。

◆同5月8日 公式HPを開設して「最後まで頑張りたい、負けたくないという気持ち」と記す。

◆同9月6日 日本学生選手権を会場で3日連続の応援。男子総合優勝に「とてもうれしかったです」。

◆同12月17日 公式HPで退院を発表。今後の目標に「2024年のパリ五輪出場、メダル獲得という目標で頑張っていきたい」。

◆20年3月17日 406日ぶりのプールに入ったことをSNSで報告。「言葉に表せないぐらいうれしくて、気持ち良くて幸せ」。

◆同5月18日 短髪を初披露し「今のありのままの自分を見てもらいたい」。

◆同6月16日 所属先ルネサンスの西崎勇氏をコーチに迎える新体制を発表。