東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の橋本聖子会長(56)が9日、都内で会見し、政府が日本代表選手に対し新型コロナウイルスのワクチンを優先接種させる検討を始めたと一部で報道された件について言及した。

「ワクチンがなくても安心安全な大会とする方針は今も変わっていない」と検討を否定。一方で、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が各国オリンピック委員会(NOC)に対し、できるだけ多くの関係者がワクチン接種するよう呼びかけていることを受け「IOC、国際パラリンピック委員会の考えも注視していかないといけない」と含みを残した。

国内では高齢者のワクチン接種も順調に進まない状況。若くて健康なアスリートに優先接種するという報道に、既に国民から批判の声が集まっている。しかし、バッハ会長が各NOCにワクチン接種を呼びかけているのに日本選手だけが接種しない状況は、世界のスポーツ界から見れば納得がいかない。

例えば対人競技の海外選手がワクチンを打っていない日本選手と対戦する場合、抵抗感が生まれてもおかしくない。選手村内でも接種していない日本選手団を敬遠する可能性もある。

日本代表選手への優先接種を決めれば、ただでさえ低い五輪への国民支持率がさらに低下するかもしれない。一方で批判を避けるために優先接種をしなければ、世界のスポーツ界から批判を受ける。最悪の場合、いくつかのNOCが選手派遣を見送る方針を表明する可能性もある。

昨年、大会が延期するに至った要因の1つがNOCの声だった。複数のNOCが日本への選手派遣はできないと表明したのだ。今回、同様の声が上がり始めれば大会開催に黄色信号が出る。再延期という選択肢がない中、ワクチン接種を所管する日本政府やIOCと交渉する組織委のこれからのかじ取りが、大会開催に向けて非常に重要となる。【三須一紀】