先月4日の試合で右脇腹を肉離れし、離脱していたビックカメラ高崎の上野由岐子投手(38)が1カ月ぶりの復帰登板を果たした。先発で4回を2安打3失点。負け投手となったが、3、4回は本来の姿で、試合の感覚を取り戻し、マウンドを降りた。

初回はいきなり先制3ランを浴びた。1死一、二塁。4番安川に高めに抜けた変化球を捉えられた。きれいな放物線を描き、左翼へ運ばれた。ストライクとボールがはっきりし、甘くなったボールを狙われた。「試運転みたいな感じ」という復帰登板は結果的に、この1球に泣いた。

ただ、徐々にらしさが戻った。2回は2四球を与えてピンチを招いたが、最後は空振り三振で仕留めた。3回は3者連続三振。4回は4回は味方のエラーで走者を出すも、2三振と本来の球の力、コントロールで、本領を発揮した。2回から4回にかけて5者連続を含む三振は7つ。「イニング重ねるごとに感覚が戻ってきた。最後の方はいい感じ。これならばやっていける」。5回からは同じく東京五輪で日の丸を背負う藤田倭投手(30)に託した。勝利には貢献できなかったが、確かな手応えを持って、マウンドを降りた。

4月4日の豊田自動織機戦で8回2/3を投げて、右脇腹が急に痛んだ。その後、全治3週間と診断された肉離れについては「予定通り順調にここまでこられた。完治していると思います」と万全を強調。ゲームの強い負担の中でも痛みが出ないことは確認できた。東京五輪の金メダルの命運を握るエースは「大丈夫」と力強く言った。

もう不安はない。東京五輪オープニングラウンドのメキシコとの第2戦である7月22日に39歳になる右腕は「毎年、ベテランと言われますけど、いろんな経験をさせてもらっているし、その都度、引き出しはやりがいは感じながらやっています」。試合の中での修正力も上野の武器だ。故障明けの登板でも、その能力を遺憾なく示した。