東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの観客上限を巡る問題で運営主体の組織委員会では、無観客やむなしの声が強まっていることが11日、複数の大会関係者への取材で分かった。

新型コロナウイルスの感染が収まらず、今月末に延長された緊急事態宣言がさらに延びて6月にずれ込む可能性もある。

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国民には五輪開催で「感染拡大や医療崩壊につながるのでは」と漠然とした不安がある。5、6割が「中止すべき」とする世論調査にそれが表れている。

無観客でも各国選手、チーム関係者、五輪ファミリー、報道陣ら約6万人が海外から入国する。IOCや組織委は先月末、コロナ対策を明記した「プレーブック第2版」を公表し、選手や関係者の防疫措置を示したが一般国民には、ほぼ伝わっていないとみていい。

組織委などはこれまで、決定事項のみを情報発信するスタンスを取ってきた。複数の組織委理事が「肝心な情報は理事さえ降りてこない」と不満を漏らす。

3月、橋本氏は4月に観客上限を決めると意欲を示していたが各団体がそれぞれの主張をして結局、まとまらなかった。そして出した方針は「6月」と1カ月間もある幅広い判断時期を示しただけ。国民が不誠実と思うのは無理もない。

国民と真剣に議論をするには決定事項の垂れ流しだけでなく、選択肢の開示も必要。観客上限も「ロードマップ(工程表)」を示すべきではないか。例えば感染状況がステージ2以下になれば上限50%、ステージ3以上であれば無観客、などと示せば分かりやすい。

医療体制も、無観客になれば何人の医師や看護師が減らせるのか具体的な数字で示すべきだ。国民が納得した中で、五輪を開催するために、組織委などは情報を積極的に開示し、説得し続けるしかない。【三須一紀】