政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長(72)ら専門家有志が18日、東京五輪・パラリンピック開催に伴う新型コロナウイルス感染拡大のリスクに関する提言を発表した。「無観客での開催が望ましい」と明記。観客を入れた場合でも、感染状況次第では、期間中でも無観客に切り替えることを求めた。組織委員会の橋本聖子会長(56)は提言を受けたが、有観客で開催する考えを示した。

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尾身氏は橋本氏と西村康稔経済再生相に提言書を手渡した後、他の専門家有志とともに、都内の日本記者クラブで会見した。「五輪・パラの規模と注目度は、普通のスポーツイベントの中で別格。開催に伴う人流や接触機会の増大リスクがかなりある」。通常のイベント開催条件より厳しい対策を取るべきと強調した。

期間中の中断リスクについても言及した。「つい最近の大阪のように、感染状況が悪化した場合、五輪を続けるのは難しくなる」と指摘。「いわゆるリバウンドは東京などでも起こり得る。その前に予兆をつかみ、しっかりとした対策をちゅうちょなく打つべきだ」と訴えた。

提言書に署名した専門家は、分科会の約半数の9人を含む26人に上った。「人との接触の8割削減」を呼び掛けた「8割おじさん」こと京大の西浦博教授や東京都のアドバイザーを務める国立国際医療研究センターの大曲貴夫医師ら、政府や自治体に助言してきた専門家が名を連ねた。

尾身氏は国会でも、選手ら大会関係者以外の感染対策が十分ではないと懸念し、政府に検討を求めてきた。専門家有志の提言に至った理由を「政府が再三、分科会には諮らないと発表していたから」と明かした。

尾身氏によると当初、提言書には開催の有無についても盛り込まれていた。「総理がG7で五輪・パラ開催を表明した。ほとんど意味がなくなった」とした。

尾身氏は提言書の英語版を作る意向を明かすなど、国際的にも発信したい構えだ。政府や組織委に対して「リーダーシップを発揮し、リスク軽減策や、どのような場合にリスク回避するのかといった基準を早急に示すべき」と訴えた。【近藤由美子】