東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長(78)が9日、五輪閉幕一夜明けの報道対応を都内で行い、国際オリンピック委員会(IOC)との関係や今後の大会の在り方について「私案」を語った。

今大会でいえばマラソン・競歩会場の札幌への移転を決めたり、多額の開催経費を押しつけたり、強権を発動するイメージがあったりするIOC。アスリートに救われたものの、五輪が閉幕しても国民から嫌悪感を持たれている中で「開催都市にとってIOCは良いパートナーなのか」と質問されると、こう答えた。

「私自身は良いパートナーだったと思っている。ただ、意見の違いは当然たくさんあった。意見の違いが端的に出ることも、早く合意できることもある。その中で我々は徹底して強く申し上げてきた。世間の印象ではIOCは横暴で、全てIOCのペースで進んでいくと思われているが、開催国として言うべきことは言う、がスタンスだった。最終的には、お互いに前向きの妥協点を見た。意見の一致を見た。強く言えば、実はIOCも考えをあらためてくれる。協力関係はあった」

その上で、今後の開催都市の決定に関して個人的な意見を披露。「これだけ規模が大きくなると、五輪を受け入れられる都市は限定される。やはり、ある程度の経済力がある国の大都市にならざるを得ない。それを続けていくと、東京、パリ、ロサンゼルスと何度も何度も同じ大都市になりかねない。今後の課題だ」とした上で「例えばの話だが」と持論を展開した。

招致までさかのぼり「(半径)8キロ以内で開催するコンパクト五輪は全く適切ではない」。その意図について「一見、もっともらしいけど、コンパクトは全く適切ではないプレゼンテーションだったと思う。(事務総長に)就任してから考えたが、十数キロ先に施設があるのに、わざわざ8キロ以内に造っても、事後の運営が成り立たない。運営はしやすくなるかもしれないけれど、今回は東京都の外に持っていって、結果、新しいものを建てる数がかなり削減された」。

続けて分散、共催まで視野を広げた。「あまりお金をかけず、できるだけ簡素な、条件を満たす会場を用意する中で『8キロ圏内』は意味があったのかなと。理解できなかった。結局その約束は守られなかったという意見もあるが、むしろ必然的に広がらざるを得ない」と強調し「できるだけ無駄なお金をかけないため、例えば次の24年パリ五輪ではサーフィンを(フランス領)タヒチで開催する。そういうことも考えていくべき。内陸国でやる時には海がないので考えることはあるし、広域開催という考え方もある。これは1つの私の思いだが、多くの国、都市が共催する可能性があってもいいんじゃないかとも思う」と胸の内を明かす一幕もあった。【木下淳】