義足スプリンターの世界最速の戦いはフェリックス・シュトレング(26=ドイツ)が制した。

男子100メートル(義足・機能障害T64)決勝(追い風0・3メートル)。前半から鋭く伸び、ライバルの猛追を振り切った。タイムは10秒76。「とてもとても幸せだよ。精神的にもうまく準備できたよ」。そう満面の笑みを見せた。予選では10秒72の大会新。その勢いを保ち、決勝も勝ちきった。

生まれたのはボリビア。先天的に右足すねから下がなかった。01年に家族とドイツへ移住。12年から競技を始め、あのウサイン・ボルトに憧れた。17年の左前十字靱帯(じんたい)負傷など大きな故障も多かったが、ボルトのように、世界一にたどり着いた。ゴール後はコースを歩き、喜びをかみしめた。

「義足をつけていてもいろんな事ができる。前向きに行動できるのは大切なこと」。義足の子にも勇気を与えるように、言葉を並べた。

銅メダル争いもドラマが生まれた。2連覇中のジョニー・ピーコック(28=英国)と、両足義足で10秒54の記録を持つヨハネス・フロールス(26=ドイツ)の2人が同着。10秒79。記録に残らない1000分の1秒まで同じ。10秒786。着差なしで2人が銅メダルいう珍しいケースに。女神は2人にほほ笑んだ。電光掲示板に結果が出ると、2人は強く抱き合った。

このクラスではT44(下腿=かたい=部に機能障害)、T62(両足下腿切断)、T64(片足下腿切断)の選手が一緒に走る。【上田悠太】