パラリンピック初出場の大谷桃子(26=かんぽ生命)が銅メダルを獲得した。3位決定戦で上地結衣(27=三井住友銀行)とのペアで、王紫瑩、朱珍珍(ともに中国)組を6-2、7-6のストレートで下し、大谷自身は今大会初のメダルとなった。上地は、前日のシングルス銀メダルに続く2個目のメダルを獲得した。

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山あり谷あり、濃密な初出場となった。銅メダルが決まった瞬間、大谷は、まずほっとした表情を見せた。「上地さんにサポートしてもらった。結果的に銅メダルを獲得できてすごくうれしい」。相手に徹底的に狙われたが、必死で返球。「先にミスをしないようにした」と耐えた。

16年から指導を受けている古賀雅博コーチと、大会直前まで拠点とする佐賀で練習した。そのまま2人そろって車で上京したが、スタッフの人数制限により古賀コーチは会場に入れなくなった。心のよりどころがなくなり、シングルスは緊張の嵐だった。

「こんなに緊張が抜けなかったことはない」。シングルス2回戦では、ランク下の選手に苦戦した。それでも「コートにいなくとも、しっかりスコアを追っている」というコーチの言葉を思い出し、自分を奮い立たせた。

前日の上地が戦った女子シングルスの決勝は、午後11時33分に終了という遅い時間だったが、しっかりと目に焼き付けた。「すごくたくさん思うところがあった。(興奮して)なかなか寝付けず、結局、午前2時ぐらいに寝た」。その刺激が3位決定戦にも生きた。

栃木・作新学院高卒業後、病気の治療薬の副作用で車いす生活が始まった。高校3年で高校総体のダブルスに出場した腕前。特に、サーブやスマッシュが得意だったという。その経験で、昨年は女王デフロートや先輩の上地を下すなど、一気に才能が開花。世界ランクも5位に上昇した。

その勢いで初のパラリンピックに挑んだ。「過酷だとは聞いていたが、本当にそうだった」。4大大会とは違う厳しさに初めて身を置き、「パリに向けて改善したい」。その目は早くも3年後に向いていた。【吉松忠弘】