1972年の札幌五輪、70メートル級ジャンプで日の丸が3本揚がりました。金メダルの笠谷、銀の金野、銅の青地。表彰台の上で肩を組む3人の姿は、印象的でした。ズボンの裾を両手でバタバタさせて前傾姿勢をとる「笠谷ごっこ」が小学校ではやったほど。「日の丸飛行隊」の「表彰台独占」に日本中が沸きました。

世界中から集まる選手の中でメダルを獲得して表彰台に上がるのは大変なことです。1カ国の選手が独占すれば、強さの象徴としてこれ以上のことはありません。陸上の米国、スピードスケートのオランダなどが大会を沸かせていますが、日本も72年のジャンプを含めて過去6回、この快挙を達成しているのです。

最初は、32年のロサンゼルス大会競泳男子100メートル背泳ぎでした。実は、五輪表彰式で表彰台が使われたのはこの大会から。それまでの表彰式は並んでメダルを受け取り、国旗が掲揚されるだけでした。すでに英国の大会で使われていたのにヒントを得て、表彰台が五輪に登場したのです。

32年の競泳男子は個人5種目のうち4種目で日本が優勝。メダル独占など計10個のメダルを獲得したことで「水泳ニッポン」が定着したといえます。72年ミュンヘン大会の体操では個人総合など男子3種目で独占。「体操ニッポン」の強さを見せつけました。

もっとも、日本の表彰台独占は72年が最後。「なるべく多くの国にメダルを」という国際オリンピック委員会(IOC)や各国際競技団体(IF)の考えもあって、出場制限が厳しくなりました。競泳は1種目につき1カ国最大2人、体操は決勝進出(8人)が1カ国2人まで。日本が得意な柔道やレスリングは、もともと1階級1人です。

陸上やフェンシング、トライアスロンなど1カ国3人出られる競技もありますが、参加国も参加人数も増えた今は表彰台独占は難しい。306種目行われた前回のリオデジャネイロ大会でも、メダル独占は陸上女子100メートル障害の米国と1種目だけでした。

ただ、東京大会では日本が表彰台を独占する可能性があります。1カ国3人出場のスケートボード・パーク女子です。昨年中国の南京で行われた五輪予選シリーズでは岡本碧優、四十住さくら、中村貴咲と表彰台を独占、世界最高峰のXゲームでも岡本が優勝、開心那が2位、四十住が4位に入りました。五輪ランキングも1、2、7、9位と日本勢がずらり。ちなみに3位のスカイ・ブラウン(英国)も宮崎在住です。

日本代表の早川コーチも「メダル独占の可能性も十分あります」と目を細めるほどで、代表争いの方が厳しいかも。若い選手たちだけに、この1年での成長も期待できます。来夏、半世紀ぶりに「日本の表彰台独占」「日の丸3本」が見られるかもしれません。【荻島弘一】