東京五輪日本代表にオーバーエージ(OA)枠で招集されたDF酒井宏樹(31=浦和)が、28日の1次リーグ最終戦(横浜)で対戦するフランスを警戒した。フランス1部リーグで今夏まで5季にわたってプレー。チームで誰よりもフランスを知る。ベストメンバーを集められなかった相手にも油断は禁物だと強調した。チームは静岡合宿を終え、12日のU-24ホンジュラス代表との国際親善試合に向け、大阪入りした。

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フランスを熟知する酒井は言う。「今回のようなケースがいちばん危ない」と。同国は今大会、有力選手の招集に失敗。欧州選手権もあり、そもそも五輪は選手の招集に強制力がない。ただ、注目されたエムバペ(パリ・サンジェルマン)だけでなく、1度はメンバーとして発表された選手を、クラブが拒否。招集できない状況に陥った。「ベストではない」と分析しつつも「リーグで試合に出ている選手はたくさんいるし、先発の11人は能力がある」と話した。

マルセイユで長くプレーした経験から「精神的な部分では少し弱いところもある」と分析する。しかし今回は、その特性がプラスに働くと予想した。「ユーロみたいに優勝候補と言われるよりも、『(メンバーが)あまりそろっていない』と言われているほうが集中力が高いのでは。しっかりしたメンタルや戦術があると、計り知れない能力を発揮する」。フランス戦は、1次リーグ突破がかかる試合になる可能性もあるだけに、不気味な存在だ。

酒井自身、五輪には悔しさもある。12年ロンドン大会では4位。メダルが狙える位置にいたが宿敵韓国に屈した。「(準決勝で)メキシコに負けて引きずっていた。精神的に未熟だった」。過去最強とも言われる今回のチームについて「海外組もA代表組もいる。これほど試合慣れしているメンバーはめずらしい」と手応えを口にしつつも「勝負の世界では(1次リーグで)全勝も、全敗もありえる。前評判は関係ない」と、油断のない表情で語った。

チームは残る国際親善試合2試合で仕上げ、本大会を迎える。「近づくにつれてプレッシャーは高まる。いい緊張感を持って臨みたい」。フランスを知り尽くすリーダーは、自然体を貫いて開幕に向かう。【岡崎悠利】