日本が1次リーグ初戦で南アフリカと対戦し、1-0で勝利した。新型コロナウイルスの陽性者2人が出た南アフリカに対して大きく攻め込みながら得点できない時間が続いたが、MF久保建英(20=レアル・マドリード)が後半26分に得意の左足でチーム第1号を決めた。日本の五輪最年少ゴールで、チームに勝ち点3をもたらした。中2日でメキシコ、フランスと続く強豪との対戦に向け、好スタートを切った。

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久保が日本を救った。後半26分。右サイドでパスを受け、内に切り込んだ。DFが対応に遅れた瞬間を逃さず左足を振り抜くと、GKの手をかすめたシュートは左ポストに当たってゴールに吸い込まれた。0-0のじれる試合展開に「途中から、『今日決めるとしたら自分だ』と言い聞かせていた」。停滞感を吹き飛ばす1発で雄叫びを上げた。

パスの出し手だった田中がボールを持った、その一瞬の思考だった。「そこまで何回か縦にいっていたので中にいけるなと思っていた。(シュートは)前半ニアに外していたのでファーを狙って、しっかり(足の)面に当てようと」。すべてがゴールから逆算されたプレー。パスのトラップで「思い通りに止まった」。ここで勝負はついていた。

ゴール右よりのシュートコースは“久保ゾーン”だ。6月12日の国際親善試合ジャマイカ戦(豊田ス)では、同じような角度から衝撃の4人股抜きシュートで得点した。かつては抜群の突破力を誇りながら、決定力不足を指摘されることもあった。昨季、ビリャレアルでプレーした際には練習後、そして試合後にもピッチに残り、シュート練習を重ねる姿があった。「しっかり練習してきた。量は裏切らないと思う」。天才と言われた20歳は小さな努力を重ね、あの角度を自分のものにした。

チームは苦戦。選手に新型コロナウイルスの陽性者2人を出し、フィールド選手が12人しかいない南アの割り切った守備に手を焼いた。「(情報を)鵜呑みにしたらやられていたと思う。それくらい(相手の)コンディションはよかったし、緊迫した試合だった」。コロナ禍に見舞われた五輪を象徴するかのような1戦だったが、集中力を切らすことなく勝ち点3をつかんだ。

勝利が最優先の短期決戦でチームを大きく勢いに乗せた。「こういうところでしっかり決められて、1つまた(力を)証明できたかな」。自分に厳しい男が珍しく、自身に合格点を出した。【岡崎悠利】

▼五輪最年少得点 20歳のMF久保が後半26分に決勝点。20歳1カ月18日でのゴールは00年シドニー五輪の1次リーグ・スロバキア戦でMF稲本潤一がマークした20歳11カ月30日を更新する日本の五輪本大会での最年少得点記録となった。