9月に開幕する国内初のサッカー女子プロ「WEリーグ」の誕生でプロ契約を結ぶ女子選手が増えた中、サッカー女子日本「なでしこジャパン」のFW菅沢優衣香(30=三菱重工浦和)は、三井住友海上埼玉損害サポート部での勤務を続けている。

OLとアスリートの二刀流を貫く裏には、女子サッカー界の発展を願う、菅沢の強い思いがある。【取材・構成=杉山理紗】

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最前線で体を張って攻撃の起点を作る菅沢には、ピッチ外でも重要な役割がある。合宿や試合の間を縫って週2日勤務しており、データ処理に経費精算、備品の発注、本社からの情報共有、部内資料の作成などを行っている。パソコンを使った業務がメインだが、同じ部署で働く飯室和久さんは「スピーディーかつ正確。頼っています」と、ここでも信頼は厚いようだ。

WEリーグの設立に伴いプロ契約に移行する選手が増えた中、菅沢は「会社から1人でも五輪選手が出て活躍すれば恩返しになる」と、迷わずOL続行を選んだ。14年の入社前はスポーツ関連施設などで働いていたが、現在の職場に移り、自身も女子サッカーの認知向上に貢献できるかもしれないと感じた。「働いているうちは、身内だけでも広まってくれれば」との思いで、二刀流を続けている。

ピッチを離れれば普通のOL。ドラマの話や夏休みの予定など、ランチの話題もさまざまだ。同僚の飯田紀子さんは「サッカーのときとは別人物のよう。癒やし系でほわっとしていて、物腰が柔らかい」と話す。

1次リーグ3試合では、本来の持ち味を発揮しきれなかった。昨季は17得点を決めたリーグ得点王。体格を生かしたポストプレーやパワーあるシュートなど、まだまだチームに還元できるものはある。応援してくれる同僚のために、そして女子サッカーの未来のために-。たくさんの思いを背負って、菅沢は強豪スウェーデンに立ち向かう。