原田海(22=日新火災)が予選敗退した。20人が出場した予選で18位にとどまり、上位8人で争う決勝進出を逃した。

最初のスピードで15位と出遅れ、ボルダリングが12位。最終種目のリードでも17位と上位に食い込めなかった。インタビューでは膝に手をつき、涙を流して「『自分らしい登りをしたい』っていう風に、ずっと言っていたんですけれど、全然それもできなくて、悔しいというか…。もう、自分にあきれた感じがしました」と言葉を絞り出した。

だんじり祭りで有名な大阪府岸和田市で育った。小5に競技を始め、16歳からW杯に参戦。ジュニア時代から国際大会で活躍し、18年世界選手権では19歳の若さでボルダリングの頂点に立った。

冷静沈着で大舞台に強い。19年8月の世界選手権東京大会(兼五輪代表選考会)の複合で、五輪代表に内定した楢崎智亜に次ぐ日本勢2番手の4位だった。大会後に五輪「2番手」の選考基準を巡り、日本協会と国際連盟が対立。解釈の違いが生じ、日本協会がスポーツ仲裁裁判所(CAS)に訴える異常事態が起きた。昨年12月に日本側の主張が棄却され、原田の代表内定となった。立場が定まらない状況が1年以上続き、ストレスもたまったが「自分以外の(候補)選手は五輪に出られなくなった。中途半端な気持ちで登ってはいけない」と誓った。

しかし、原田の最終ゴールは五輪ではない。あくまでも、目の前の1つ1つの大会に全力を注ぐというスタンスで「五輪も国際大会の1つ」という考えだ。初の大舞台も「通過点」-。自然体を貫く22歳のクライマーは、次の舞台へ向かう。【峯岸佑樹】

◆スポーツクライミング 東京五輪ではスピード、ボルダリング、リードの3種目複合で争う。スピードはホールドの位置が国際統一基準で定められ、2人で高さ15メートルの壁を登るタイムを競う。フライングは失格。ボルダリングは高さ4~5メートルの壁に多数のホールドが設置され、複数の課題(コース)に挑んで制限時間内の完登数を争う。壁の高さ12メートル以上のリードは制限時間内での到達高度が記録となる。複合の総合点は3種目の順位をかけ算して算出し、スピード5位、ボルダリング1位、リード3位なら「5×1×3」で15点。点数の少ない方が上位となる。24年パリ五輪ではスピードが単種目、ボルダリングとリードの2種目複合が実施される。