飛び込み男子の寺内健(39=ミキハウス)が8日、電話取材に応じた。昨夏に全競技を通じて「東京五輪内定1号」となったが、大会期間中に40歳を迎える東京五輪が1年延期。「五輪が40歳から41歳になって『大変じゃないか』とよく言われます。でもこの1年(の延期)が大変だったら、40歳で五輪を目指してないです」ときっぱり言った。

五輪延期は、自宅でネットニュースによって知った。それ以前から海外選手と連絡をとりあって、練習状況などを確認していただけに「そりゃそうだよね、と思いました。今もそうですが、人命が優先です。五輪は平和の中で行われるものなので。練習は二の次で、やはり命が大切ですから」。現在は自宅で自重を使った体幹トレーニングなどを行う。「ジャンプ系をやると(マンションの)下の階の人に迷惑がかかりますしね」とからりと言った。

練習ができない分、普段できないことに時間を使っている。「子どものころ、競技中心の生活で、ゲームを買ってもらえなかった反動かな、スーパーファミコン(テレビゲーム機)を買ってやったり。運動量が減って少し体重が増えたので、料理も時間をかけてやっています。この前は野菜だけのアヒージョを作ろうと思った。(具が)なんか寂しいなといろいろ入れていたら、鍋いっぱいのアヒージョができました」と苦笑い。10代から飛び込み界のトップを走ってきただけに「今までにない時間の使い方になった」という。

あらためてスポーツの価値について、考える時間もできた。「五輪は日常が平穏である上に成り立っている。スポーツ選手は、社会に輝かせる場所をつくってもらっている。選手がどう社会に貢献できるのか。『これだ』という答えはないが、もし世の中が平穏になった暁に五輪ができたら、それ(平穏)に対する象徴でありたいと思っています」と控えめに言った。

昨夏の東京五輪内定1号から、通算の準備期間は2年となる。現在は練習ができない日々だが、無理に焦らないようにしている。

「できることをできる範囲で。1歩踏み出すのはプールでの練習を再開してからになります。先に目標があることはいいことだと思っています。期間が延びたことでよりトレーニングを考えてできる。ネガティブには捉えていません」

慢性的な右肩は飛び込みの練習がないために、気にならない程度に回復しているという。日本人最多タイの6度目五輪を「不惑のダイバー」として迎える寺内は、惑うことなく自分のペースでその日を待つ。【益田一弘】