男子高飛び込みの「超新星」玉井陸斗(14=JSS宝塚)が、五輪内定から一夜明けて早くも動きだした。決勝で424・00点の8位入賞。昨年9月以来の「109C(前宙返り4回半抱え型)」を解禁した。難易度3・7は玉井が飛べる最高難度の技。これまで五輪切符優先で難易度を落としていたが、攻めの姿勢に転じた。16年リオデジャネイロ五輪銅相当の自己ベスト528・80点を出した構成を復活させる。

   ◇   ◇   ◇

高さ10メートルの台を走った。台の先端で勢いよく踏み切る。持ち味の回転スピードで4回半。余裕をもって入水姿勢に入った。水しぶきは立ったが「109C」で77・70点。「昼の練習では真っすぐ入ったが、試合でも高得点は出せた」。最近1カ月は練習していない。試合前に1本飛んだだけだったが、体が覚えていた。

内定から一夜明けて早くも動きだした。馬淵コーチは五輪の種目構成を109Cと、さらにこの日の4本目に1回ひねりをプラスした「6245D(逆立ち後ろ宙返り2回2回半ひねり自由型)」にする方針。昨年9月の自己ベスト再現を狙う。玉井も「安定した演技でまず入賞したいと思うが。調子が上がっていれば、メダル争いをしたい」。

憧れの存在も刺激だ。この日優勝したトーマス・デーリー(英国)に「最後まで決めきる力がすごい」。09年世界選手権を15歳で制した男と少しの縁がある。

18年3月、静岡県富士水泳場で海外選手が集うワールドシリーズを観戦した。馬淵コーチから「見ておけ。いずれ、この舞台に立つ選手になれ」と言われて、兵庫県から家族で訪れた。

トップの演技を目に焼きつける、とともに大会ポスターとペンを持ってわくわく。当時は小5の11歳。選手が通る通路に陣取ってサインをねだった。デーリーが立ち止まり、引き受けてくれた。他の選手のサインまで。そのポスターは額に入れて自分の部屋に飾る。そんな選手たちと競い合い、東京五輪で再会する。

初の大規模な国際大会で8位入賞。「たくさんの人をヒヤヒヤさせましたが、決勝に残れてよかった」。決勝は4本目を終えて3位と約10点差の4位だった。「自分もこういう舞台で戦える選手なんだなと思いました。このまま突っ走りたい」。14歳は大きな自信を手にした。【益田一弘】

◆玉井陸斗(たまい・りくと)2006年(平18)9月11日、兵庫県宝塚市生まれ。3歳の時にJSS宝塚で水泳教室に通い始めて、小1で飛び込みを始める。小5から本格的に寺内らと一緒に練習する。19年4月に日本室内選手権で、12歳7カ月の史上最年少優勝。好きな食べ物は牛タン。家族は両親と兄。憧れは寺内健。155センチ、51キロ。

◆飛び込みの採点 男子は6本、女子は5本の試技で合計点を競う。種目(技)には回転数、ひねり、足の形などでそれぞれ難易度が設定されている。7人の審判は0・5点刻みの10点満点で評価点をつける。上位2人、下位2人を除く3人の評価点を合計して、難易度を掛けた値が得点になる。109C(前宙返り4回半抱え型)は難易度3・7。仮に審判全員の評価点が10点だった場合は30点×3・7=111点。同9点の場合は27点×3・7=99・90点、同5点の場合は15×3・7=55・50点になる。