白血病による長期療養を経て東京オリンピック(五輪)代表入りを決めた競泳女子の池江璃花子(20=ルネサンス)が7日に、SNSを通じて代表の辞退や五輪への反対を求めるメッセージが寄せられていることをツイッターで明かした。一夜明け、8日までに、この発信を巡る一連の動きに、多くの反応が集まった。

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「とても苦しいです」。

その一文に、心から血がにじみ出ていると感じた。

7日夜に池江がSNSに文章を投稿した。SNS上で「代表辞退」「五輪中止表明」を求める声が届いたという。開催に賛成するのも反対するのも個人の自由だ。だが匿名で自分に都合がいい意見を、20歳の現役選手に無理強いすることが許されるはずがない。

池江は、負けず嫌いで前向きな性格だ。4年以上担当するが、取材現場でもそうだ。必ず質問者の目を真っすぐ見て答える。SNSでもつらい心情を発することもほぼない。思いつくのは19年3月、抗がん剤治療が始まった直後の「思ってたより数十倍、数百倍、数千倍しんどいです」ぐらいだ。そんな池江に「とても苦しいです」と言わせる、匿名の圧力がおぞましい。

池江は闘病中、家族に1度だけ「死にたい」ともらし、深く後悔している。何よりも命が大事であることは身をもって知っている。だからこそコロナ禍の東京五輪を俯瞰(ふかん)した時、葛藤が生まれることは想像に難くない。そんなジレンマを抱えた20歳の心を、筋違いな意見の押しつけが無慈悲に責め立てた。

そもそも東京切符は目標のパリ五輪前に思いがけず手にしたものだ。しかも池江は「ないなら次に向けて頑張るだけと思っています」としている。五輪を開催してほしいと主張しているわけでもない。

そしてもちろん五輪開催は1人の選手が決められることではない。

【水泳担当=益田一弘】