センター五輪初出場の大橋悠依(25=イトマン東進)が、女子400メートル個人メドレーで金メダルを獲得した。予選3位通過で迎えた午前決勝で、自身の日本記録に1秒26差に迫る4分32秒08で逃げ切った。同種目の金メダルは、00年シドニー大会の田島寧子の銀を上回り日本人初。昨年12月には行き場をなくして引退さえ頭をよぎった危機から、劇的に復活した。競泳陣では今大会メダル第1号となった。

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平井伯昌コーチ(58)は、指導者として6個目の金メダルとなった。北島康介4、萩野公介1に大橋が続いた。「正直、万全の練習ではなかったが、最後に整った。『おめでとう、がんばってきてよかったな』と伝えました」とした。

戦略は「300メートル-350メートルで距離(リード)を保つ」。米国の個人メドレー選手は最後の自由形が強い。自由形の前半50メートルで、相手に追いつけないと思わせることが逃げ切るこつ。それは16年リオデジャネイロ五輪金の萩野が、銀のケイリッシュ(米国)を相手に実行した策でもあった。大橋とは折に触れて、映像で確認した必勝法だった。

24日の予選は自由形を流して余力を持って3位通過。大学時代は絶妙の力加減で予選を通過する大橋を「流しの天才」と呼んでいた。この日は「緊張する」という大橋に「周りはお前が一番力をためていると思っている。お前に一番びびってるぞ、メダルは固い、色は自分次第だ」と送り出した。金メダルを見て「だましの天才だな」と笑った。

高校時代の大橋を見て「水を捉える能力がある。体形から考えて大学の後半から社会人で伸びる。リオは無理だが、東京で活躍できる」と東洋大に勧誘した。「繊細なので難しいところもあるだろうと思った。信頼は365日というわけじゃないが、こうして報われた。本当にうれしい」。