女子テニスで2度の4大大会優勝を誇る大坂なおみ(22=日清食品)が、沈黙を破った。

感染拡大する新型コロナウイルスや来年へ延期が決まった東京オリンピック(五輪)についてこれまで言及しなかったが、28日に自身のSNSで「2021年に私たちの国の美しさを世界の皆さんに見せましょう」と熱い思いをつづった。

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突然の長文投稿だった。これまで新型コロナウイルスや東京五輪に関して他者のコメントを再投稿したり、絵文字での投稿はあったが、自身の気持ちを文字ではっきりと示したのは初めて。いち早く反応した他の選手に比べ、時間は遅かったが、考えに考え抜いた熱い思いが込められていた。

「オリンピック延期のニュースが報道された数日前から、この思いをどうやって皆さんに伝えられるかずっと考えていました。残念という言葉だけでは言い表せない気持ちです。サポーターの皆さんは、私にとって、母国である日本で開催されるこのオリンピックが、どれだけ重要な意味を持っているのかご存じだと思います」

16年全豪で4大大会の本戦に初出場した際、真っ先に語ったのは「東京五輪に日本代表で出るのが夢」だった。その思いは4大大会に2度優勝し、アジア初の世界女王に輝いても変わらない。

「スポーツは人々の心をつなぎ、感動を与えるパワーがあります」と訴える。しかし、「今、私たちがしなければいけないことはスポーツを救うことではなく、世界中の人々が人種や国籍の壁を越えて、数多くの命を救うことが1番、大切なことです」と、現状と延期を十分に理解している。

今年、男女テニスの世界ツアーが開催されたのは、3月2日の週まで。それ以降は、ツアーを含む下部大会などの公式戦すべてが6月7日まで中断する。その間、ツアーは4大大会の全仏を含め、男子は14大会、女子は12大会が延期もしくは中止に追い込まれた。

大坂も今季出場できた個人戦はわずか2大会だけ。6月8日以降には、同29日から予定されているウィンブルドンがある。しかし、主催者は延期や中止を検討していると今月25日に発表。無観客の開催は行わないとしており、中止となる可能性が高い。それでも大坂は前を向く。

「2021年にわが国の美しさを世界の皆さまに見せましょう。それまで、どうか健康に気をつけて、思いやりの心を忘れずに、みんなで頑張りましょう」

日本だけでなく全世界に向けて呼びかけた。

◆大坂なおみ(おおさか・なおみ)1997年(平9)10月16日、大阪市生まれ。3歳でテニスを始め、4歳で米国に移住。16年全豪で4大大会本戦初出場。18年全米、19年全豪を制し、アジア選手として史上初めて、シングルスで世界1位に輝いた。父レオナルドさんはハイチ出身の米国人で、母環(たまき)さんが日本人。姉まりもプロテニス選手。180センチ、64キロ。