政府が東京オリンピック(五輪)・パラリンピックにおける新型コロナウイルス対策として、聖火リレーで公道を走る著名人ランナーの削減を含めた見直しを検討していることが2日、複数の関係者への取材で分かった。著名人を目的に観衆が殺到することを懸念。政府、東京都、大会組織委員会からなるコロナ対策調整会議が同日発表した中間整理でも「著名人ランナー等の対策」を今後の重点課題として挙げた。

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五輪聖火リレーは来年3月25日に福島のサッカー施設、Jヴィレッジを出発し、同7月23日の五輪開会式まで121日間実施する。各都道府県の実行委員会や聖火リレースポンサーは著名人をランナーに選考し、故郷や企業のPRにつなげようとしていた。

しかし、政府は長期のリレー期間を懸念。どこかでクラスターが発生すれば機運醸成どころか逆効果になる。実際にコロナの感染拡大が始まっていた3月、採火式を実施したギリシャ国内での聖火リレーは、ランナーのハリウッド俳優に観衆が殺到し、わずか2日で中止に追い込まれていた。

政府関係者は「機運醸成も大事だが大会本番を開催することが最優先。その前のトラブルはなるべく避けたい」と話す。同リレーは主に公道で実施するため、集まる人を制限できない。呼びかけ程度の注意喚起しかできないため、著名人の削減を含めた見直しがコロナ対策として浮上した。一方で開会式など入場制限が効く会場の著名人ランナーは対象外となる方向。

政府は9月に同会議を発足。五輪への世論の支持が上向かない中でも、安心安全な大会実施へ向けコロナ対策を主導してきた。現時点で約1000億円規模と見込まれるコロナ対策費も国の負担割合が多くなるとみられ、少しでも懸念材料を減らしたい考えだ。

一方の組織委は著名人ランナーが減る状況になれば大会前の機運醸成という面で痛手だ。10社ある五輪聖火リレーの協賛企業も納得するかは不透明。

組織委は延期決定後、一貫して今年予定していた1万人の聖火ランナーと、走行ルートになっていた47都道府県の859市区町村を基本的に維持するとしてきた。

組織委の武藤事務総長はこの日「著名人ランナーの見直しはあり得るか」との質問に「機運を盛り上げるために選んだ方々。今の時点で(見直しを)考えているわけではない」と回答した。組織委はランナーや観覧客、スタッフ、地域住民の安心安全を確保するため、年内に同リレーの感染予防策を作成することになっている。

 

◆主な聖火ランナーの著名人(カッコ内は地区)

古坂大魔王(青森)タレント

のん(岩手)女優

サンドウィッチマン(宮城)タレント

壇蜜(秋田)タレント

田臥勇太(栃木)バスケットボール

羽生善治(埼玉)棋士

石川さゆり(東京)歌手

亀梨和也(東京)アイドル

加山雄三(神奈川)歌手

小林幸子(新潟)歌手

五木ひろし(福井)歌手

松井玲奈(愛知)女優

鳥羽一郎(三重)歌手

片岡愛之助(大阪)歌舞伎役者

笑福亭鶴瓶(兵庫)落語家

イモトアヤコ(鳥取)タレント

広末涼子(高知)女優

石原さとみ(長崎)女優

指原莉乃(大分)タレント

具志堅用高(沖縄)元ボクサー