女子68キロ級でリオデジャネイロ五輪金メダリストの土性沙羅(25=東新住建)が五輪2連覇へ前進した。森川美和(20=日体大)との一騎打ちを3-1で制した。

新型コロナウイルスの感染拡大防止で、報道陣に非公開で行われた大一番。相手は昨年末の全日本選手権で2-9と敗れた新鋭。それまでの過去3戦、全て10点差のテクニカルフォール勝ちで完勝してきたが、「力をつけてきてる」と手ごわい相手だった。

試合前、2人の最強セコンドから勇気をもらっていた。サポート役についたのは、練習拠点が同じ至学館大のリオ五輪金メダリスト2人、登坂絵莉と川井梨紗子だった。所属も同じ登坂は、自身は昨年末の全日本で敗れ東京五輪の可能性がなくなる中でも、「毎日道場に来てくれた」。前夜も行動を共にし、「自信を持って。相手のペースにのまれないようにしっかりやろう」と声をもらった。川井からも「たった6分間、ずっと攻めなくてもいい。取れるところを取ればいい。最後まで気を抜かないでやれば大丈夫」と背中を押されていた。

試合では、得意のタックルを狙う機会がなかなか訪れなくても焦らなかった。「あわてて入らないようにした。展開的に良かった」。川井の助言通りに、好機を待つ。1-0でリードして迎えた第2ピリオド序盤、森川がタックルに来たところを逆にカウンターで背後に回り3-0と引き離した。反撃も最小限に抑え、号泣する登坂らと抱き合って喜んだ。

ケガの後遺症は残っている。18年3月のワールドカップで、リオ五輪前からの脱臼癖が再発、そのまま手術を余儀なくされた。半年間のリハビリ後のいまも、完治とは言えない。痛みを恐れてタックルに入るのは怖くなり、「気持ちの面でなかなかいけない」と精神面の課題は残る。今回は全日本で痛めた左膝痛も重なり、完全に練習に復帰したのは2月半ばだった。

順風満帆にはいかないが、ただそれでも、仲間の支えを力に五輪切符はつかんだ。残りは5カ月。体も心も回復させ、2度目の大勝負に臨む。

◆土性沙羅(どしょう・さら)1994年(平6)10月17日、三重県松阪市生まれ。吉田沙保里と同じ一志ジュニア教室でレスリングを始め、全国少年少女選手権で3連覇、至学館高では高校選手権3連覇。至学館大1年で世界選手権に初出場して銅。17年に初優勝。16年リオ五輪金。17年に東新住建に入社。ツイッターは@SARAbump。159センチ