人生に響く金言連発。あれから3年…イチロー引退会見を全文公開
2019年3月21日深夜、マリナーズのイチローが東京ドームで引退会見を行いました。ディレクターズカットの完全版で、日をまたいだ伝説の84分をもう1度。
MLB
(会見場に登壇し、報道陣を見渡して)
こんなにいるの? びっくりするわ。そうですか。この遅い時間にお集まりいただいてありがとうございます。今日のゲームを最後に、日本で9年アメリカで19年目に突入したところだったんですけども、現役生活に終止符を打ち、引退することとなりました。最後にこのユニホームを着て、この日を迎えられたことを大変幸せに感じています。
この28年を振り返るにはあまりにも長い時間だったので…。ここで1つ1つ振り返ることは難しいということもあって、ここではこれまで応援していただいた方々への感謝の思い、そして球団関係者、チームメートに感謝を申し上げて、みなさまからの質問があれば、できる限りお答えしたいという風に思っています。
――現役生活に終止符を打つ決断をしたのは、また理由は
タイミングはですね、キャンプ終盤ですね。日本に戻ってくる何日前ですかね…。
何日前とハッキリお伝え出来ないんですけれども、終盤に入った時です。もともと日本でプレーする、今回東京ドームでプレーするところまでが契約上の予定ということもあったんですけど、キャンプ終盤でも結果が出せずに、それを覆すことが出来なかったということですね。
――後悔はあるか
今日の球場でのあの出来事…、あんなものを見せられたら、後悔などあろうはずがありません。
もちろんもっとできたことはあると思いますけど、結果を残すために自分なりに重ねてきたこと、人よりも頑張ったということは言えないですけれども、そんなことは全くないですけれども、自分なりに頑張ってきたということはハッキリ言えるので。
これを重ねてきて、重ねることでしか後悔を生まないということはできないのではないのかなと思います。
――子どもたちへのメッセージを
シンプルだなぁ。メッセージかぁ…。苦手なのだな、僕が。
野球だけでなくてもいいんですよね、始めるのは。自分が熱中できるモノ、夢中になれるモノが見つければ、それを見つけられれば、それに向かってエネルギーを注げるので、そういうものを早く見つけてほしいなと思います。それが見つかれば、自分の前に立ちはだかる壁にも向かっていける、向かうことができると思いますね。
それが見つけられないと、壁が出てきてもあきらめてしまうということがあると思うので、いろんなことにトライして、自分に向くか向かないかというよりも、自分の好きなモノを見つけてほしいなという風に思います。
――今思い返して、1番印象的なことは
今日を除いてですよね。この後時間が経ったら今日が1番真っ先に浮かぶ、今日のことが浮かぶことは間違いないと思います。
それを除くとすれば、いろいろな記録に立ち向かってきたんですけど、そういうものはたいしたことではないというか、自分にとって、それを目指してやってきたんですけど。いずれそれは僕ら後輩が、先輩たちの記録を抜いていくというのはしなくてはいけないことではあると思うんですけど。そのことにそれほど大きな意味はないというか。そんな風に、今日の瞬間を体験すると、小さく見えてしまうんですよね。
その点で、例えば、分かりやすい10年200本続けてきたとか、MVPを取ったとか、オールスターでどうたらとかは本当に小さいことに過ぎないという風に思います。
今日のこの、あの舞台に立てたということは、去年の5月以降ゲームに出られない状況になって、その後もチームと練習を続けてきたわけですけれど、それを最後まで成し遂げられなければ、今日のこの日はなかったと思うんですよね。
今まで残してきた記録はいずれ誰かが抜いていくと思うんですけれど、去年の5月からシーズン最後の日まで、あの日々はひょっとしたら誰にもできないことかもしれない、ささやかな誇りを生んだ日々だったですね。そのことが去年の話で、近いということもあるんですけれども、どの記録よりも、自分の中ではほんの少しだけ誇りを持てたことかなという風に思います。
――イチメーターで知られるエイミーさんが見守っていた。ファンの存在とは
ゲーム後にあんなことが起こるとはとても想像していなかったですけど、実際にそれが起きて、19年目のシーズンをアメリカで迎えていたんですけれども、なかなか日本のファンの方の熱量というのは普段感じるのは難しいんですね。久しぶりにこうやって東京ドームに来て、ゲームは基本的に静かに進んでいくんですけど、なんとなく印象として、日本の方というのは表現するのが苦手というか、そんな印象があったんですけど、完全に覆りましたね。
内側に持っている熱い思いが確実にそこにあるということ、それを表現した時の迫力というのは、とても今まで想像できなかったことです。これは最も特別な瞬間になりますけど、ある時までは自分のためにプレーすることが、チームのためにもなるし、見てくれている人も喜んでくれているかなと思っていたんですけれども、ニューヨークに行った後くらいからですかね、人に喜んでもらえることが一番の喜びに変わってきたんですね。
この点でファンの方々なくしてでは、自分のエネルギーは全く生まれないと言ってもいいと思うんですね。え、おかしな事言ってます、僕。大丈夫です?(場内笑い)
――貫けたモノは何か
野球のことを愛したことだと思います。これは変わることはなかったですね。おかしなこと言ってます?僕。大丈夫?(笑い)
――グリフィーが肩のものをおろしたときに、野球の見え方が変わったといった。そういう野球のとらえ方が変わることはあった?
プロ野球生活の中でですか?ないですね。これはないです。
ただ、子どもの頃からプロ野球選手になることが夢で、それがかなって、最初の2年、18、19の頃は、1軍に行ったり来たり。行ったり、来たり?行ったり来たりっておかしい?行ったり行かなかったり?え?行ったり来たりっていつもいるみたいな感じだね。
あれ?どうやって言ったらいいんだ?1軍を行ったり、2軍に行ったり?そうか、それが正しいか。そういう状態でやっている野球は結構楽しかったんですよ。94年、これは3年目ですね。仰木監督と出会って、レギュラーで初めて使ったいただいたわけですけど。この年まででしたね、楽しかったのは。
あとはなんかね、その頃から急に番付を上げられちゃって、一気に。そりゃあしんどかったですよ。やっぱり力以上の評価をされるというのは基本苦しいんですよね。
そこから純粋に楽しいなんてということは、もちろんやりがいがあって、達成感を味わうこと、満足感を味わうこと、たくさんありました。ただ楽しいかと言われると、それとは違うんですよね。そういう時間を過ごしてきて、将来はまた楽しい野球をやりたいという風に、これは皮肉なもので、プロ野球選手になりたいと夢が叶った後はまたそうじゃない野球を夢見ている自分がある時から存在したんですよね。
でもこれは中途半端にプロ野球生活を過ごした人には待っていないもの。趣味でやっている例えば草野球ですよね、草野球に対して、プロ野球でそれなりに苦しんだ人間じゃないと草野球を楽しむことはできないと思っているので。これからはそんな野球をやってみたいなという風な思いです。おかしなこと言ってます?僕、大丈夫?
――開幕シリーズは大きなギフトと表現。我々も大きなギフトをもらった。
そんなアナウンサーっぽいこと言わないでくださいよ。
――今後ギフトはある?
ないですよ、そんなの。そんなのムチャ言わないでくださいよ。いや、でもこれは本当に大きなギフトで、去年3月の頭にマリナーズからオファーをいただいて、からの、今日までの流れがあるんですけど、あそこで終わっていても全然おかしくないですからね。去年の春に終わっていても全くおかしくない状況でしたから。今この状況が信じられないですよ。
あの時考えていたのは、自分がオフの間、アメリカでプレーするために準備をする場所、神戸の球場なんですけども、そこで寒い時期に練習するので、へこむんですよね。心折れるんですよ。でもそんなときもいつも仲間に支えられてやってきたんですけれども、最後は山で、自分なりに訓練を重ねてきた神戸の球場でひっそりと終わるのかなとあの当時想像していたので。夢みたいですよ、こんなのは。これも大きなギフトです。僕にとっては。質問に答えてないですけれども、僕からのギフトなんてないです。
――涙無く、開幕シリーズは笑顔が多かったのは
えっと、これも純粋に楽しいと言うことではないんですよね。やっぱり誰かの思いを背負うというのはそれなりに重いことなので。そうやって1打席1打席立つことって簡単ではないんですね。だからすごく疲れました。やっぱり1本ヒット打ちたかったし、応えたいって、当然ですよね、それは。
僕にも感情がないと思っている人もいるみたいですけど、意外とあるんですよ。だから結果を残して最後を迎えられたら一番良いと思っていたんですけれど、それはかなわずで。それでもあんな風に球場に残ってくれて。そうしないですけど、死んでもいいという気持ちはこういうことなんだろうなぁと。死なないですけど。そういう表現をするときはこういうときなのかなと思います。
――日本のプロ野球に戻る選択肢はなかったか
無かったですね。(どうして?)それはここで言えないな。ただ最低50までとは本当に思っていたし、それはかなわずで、有言不実行の男になってしまったわけですけれども。
その表現をしてこなかったらここまでできなかったかもなという思いもあります。だから言葉にすること、難しいかもしれないけれども、言葉にして表現することというのは目標に近づく1つの方法ではないかなという風に思っています。
――膨大な時間を野球に費やしてきた。これからは野球に費やしてきた時間とどう向き合うか
今は分からないですね。でも多分明日もトレーニングはしていますよ。それは変わらないですよ。僕はじっとしていられないから、それは動き回ってるでしょうね。ゆっくりしたいとかは全然無い。全然無いですよ。動き回ってます。
――生き様でファンの方に伝わっていたらうれしいことは
生き様というのは僕にはよく分からないですけど。生き方という風に考えれば、先ほどもお話ししましたけど、人より頑張るなんて事はとてもできないんですよね。あくまでも秤(はかり)は自分の中にある。それで自分なりに、その秤を使いながら、自分の限界を見ながら、ちょっと超えていく。ということを繰り返していく。
そうするといつの日かこんな自分になっているんだっていう状態になって。だから少しずつの積み重ねが、それでしか自分を超えていけないと思っているんですよね。一気に高みにいこうとすると、今の自分の状態とギャップがありすぎて、それを続けられないと僕は考えているので。
地道に進むしかない。進むだけではないですね、後退もしながら。ある時は後退しかしない時期もあると思うので。でも自分がやると決めたことを信じてやっていく。でも、それは正解とは限らないですよね。間違ったことを続けてしまっていることもあるんですけれども。でもそうやって遠回りをすることでしか、本当の自分に出会えないというか。
そんな気がしているので、そうやって自分なりに重ねてきたことと、今日のゲーム後のファンの方の気持ちですよね、それを見た時に、ひょっとしたらそんなところを見ていただいていたのかなという風に、それはうれしかったです。そうだとしたらうれしいですし、そうじゃなくてもうれしいです。あれは。
――現役を終えたら、この世界で、監督になったり、指導者になったりする。イチロー選手は何になる
何になるんだろうね。そもそもなんかね、カタカナのイチローってどうなんですかね?いや、元カタカナのイチローになるんですかね。あれ、どうなんだろう。元イチローって変だね。イチローだし僕って思うもんね。音はイチローだから。書く時どうなるんだろうね。どうしよっか。何になる…。
監督は絶対無理ですよ。これは絶対がつきますよ、人望がない。本当に。人望がないんですよ、僕。いやぁ無理ですね。それくらいの判断能力は備えているので。ただどうでしょうね。プロの選手、プロの世界と言うよりも、アマチュアとプロの壁がどうしても日本の場合特殊な形で存在しているので。
今日をもって、どうなるんですかね、そのルールって。今までややこしいじゃないですか。極端に言えば、自分に今子どもがいたとして高校生であるとすると、教えられなかったりとかってルールですよね。違います?そうだよね。そうすると変な感じじゃないですか。だから今日をもって元イチローになるんで。それは小さな子どもなのか、中学生なのか、高校生なのか、大学生なのか、分からないですけど、そこには興味がありますね。
