江夏豊&山田久志のエース論「絶対に勝つ宿命を背負え」華と風格だけでは勝てない

長い球史でも、左腕と下手投げのNO・1でしょう。通算の合計490勝。同い年の「大物・オブ・大物対談」をノーカットで!(2015年2月11日掲載。所属、年齢などは当時)

プロ野球

阪神臨時コーチを務めたOB江夏豊氏(66)と山田久志氏(66=日刊スポーツ評論家)の初のレジェンド対談が実現した。通算206勝の伝説のサウスポーと284勝で阪急黄金期を支えた史上最強サブマリン。球界のエース不在を嘆く2人は、3年目藤浪が開幕投手(3月27日中日戦=京セラドーム大阪)となる可能性を示し、投げ込みの必要性、調整法を説くなど熱く「エース論」を交わした。

1975年、江夏豊の投球フォーム

1975年、江夏豊の投球フォーム

山田氏 おれと江夏で何勝した? 490勝? たったそれだけか(笑い)。おれの場合、米田哲也、梶本隆夫、〝ヨネカジ〟という大先輩がいた。キャンプは2人がずっと独占してるわけ。ずっと投げてる。投げる、走るの繰り返し。こちらもそれをマネして投げるようになる。はっきり言って球数が物足りないと思うときあるね。

江夏氏 昔の野球がいいとは思わない。だが彼ら(現役投手)は我々が教わってきた野球を知らないと思うんだ。それを分かってほしいんよ。ピッチャーは投げて筋力をつける。打者は打ってスピードをつけるのが基本。どれだけ野球が変わってこようとそこは譲れない。今の子はそれが案外教えられてない。

山田氏 時代が違うからで片付けられたら仕方ない。でも「エース」と認められる投手が少なすぎるよ。

江夏氏 おれの目標は村山実だった。大きなカベだな。キャンプは3000球までいかないが、2800球は投げたと聞いたことがある。だからおれは「それ以上を投げなくては」と思ったもんよ。キャンプ終了日から逆算して、それでいくと1日150、160球投げる計算だが、毎日は投げられないから、休日前にその倍投げ込むわけよ。

山田氏 今はちょっと勝ったぐらいでエースって言われるもんな。

江夏氏 エースってのは育てられ、育つもの。〝華〟と〝風格〟だけでは勝利につながらない。やはり最終的は勝ち星よ。エースは勝つことを求められる。勝って数字を示す。エースは20勝しないと。われわれの時代は130試合制で、今は試合数も増えて、さらに登板間隔も中5、6日。先発は最低26試合、多くて30試合は投げなきゃ。

1988年、阪急・山田久志投手の投球フォーム

1988年、阪急・山田久志投手の投球フォーム

山田氏 本物のエースってのはチームに1人でいい。しかも、内外から「エース」と認めてもらわなあかん。ファンからも。成績だけでもいけない。それにエースは勝ったときには記事にならない。エースは勝つもんだから。江夏が負けた、山田がやられた…このときに記事になるもの。

江夏氏 そうよ。本当のエースは1人。その1人を中心に回るのがローテーションってこと。

山田氏 その意味では藤浪は、まだ、まだ、まだだ。

江夏氏 ヤマ、そんなこと言うと、藤浪ファンに嫌われるよ(笑い)。

山田氏 いいさ。それだけおれの藤浪への期待度が高いってことだから。スターはいるが、スーパースターがいないのは日本球界の悲劇だ。

江夏氏 おっしゃる通りで、技術、精神、すべての面でまだまだ。でも、本人はわかっているんじゃないか。決して今の自分で満足しているとは思わない。