【忘れられない味〈7〉"お母さん"の手作り弁当】札幌ドームを15年間守った「手」

記者には「忘れられない味」がある-。2年前に日刊スポーツ紙面で連載したシリーズのSeason2。取材先で、仕事の合間に、または仕事から離れた日常に出会う味は、原稿の絶妙な「調味料」になります。記者のサイドストーリーをご賞味ください!

その他野球

正直、味は思い出せないが、口にした瞬間の幸福感は覚えている。勇ましい中田翔がプリントされた黒い弁当箱。見た目通り、両手で持ってちょうど良い重量感。

こぶし大、ノリが巻かれたおにぎり2つが存在感を放っていた。負けじと、長い卵焼きが横たわる。わずかな隙間を埋めるようにミニトマト、ピーマンと、かつお節のあえ物が入っていた。デザートには巨峰。

札幌ドームのグラウンドキーパーを務めていた、工藤悦子さんの手作り弁当だ。

★矢野謙次つながりで…

工藤さんとの出会いは、15年。現日本ハムの矢野謙次2軍打撃コーチが、巨人からトレード移籍してきたタイミングだった。矢野が、工藤さんを慕っていると知った。話を聞くため、用具室の扉をノックした。

矢野謙次のサインに笑顔

矢野謙次のサインに笑顔

薄暗い6畳にも満たない空間。温かく迎え入れてもらった。数十分の取材時間で、人柄に魅せられた。帰り際に掛けられた「いつでも来なさい」の言葉。真に受けて、通うようになった。

日本ハム、プロ野球のために尽力された。日本ハムが北海道に本拠地移転した04年から18年まで、札幌ドームを拠点に働かれていた。

魅力は、朗らかさと面倒見の良さ。他球団の選手からも「お母さん」と呼ばれていた。