【忘れられない味〈8〉ほろよいで就活】あぶさん「酒しぶき」に憧れ面接前にプシュッ

記者には「忘れられない味」がある-。2年前に日刊スポーツ紙面で連載したシリーズのSeason2。取材先で、仕事の合間に、または仕事から離れた日常に出会う味は、原稿の絶妙な「調味料」になります。記者のサイドストーリーをご賞味ください!

その他野球

お酒を飲む度に「あの時飲んでいたら、どうなっていたのだろう」と思う。

野球少年だった私は漫画「あぶさん」を愛読していた。中でも主人公・景浦安武が行う「酒しぶき」に憧れた。

打席前のルーティンで、口に含んだ日本酒を「ブフォ」とバットに噴射する。そしてホームランを打つ姿がかっこ良かった。

小学生の頃、水道水で代用した「水しぶき」でマネたらボテボテの遊ゴロだったことは思い出だ。成人したら酒の力を借りたい。そう思っていた。

★テレビ局員の「缶ビール」に…

高校で野球を引退。大学入学後は20歳から競馬にハマり、あぶさんのことは忘れていた。月日は流れ、就職活動。某テレビ局のインターンに臨んだ際のこと。

局員が就活話をしてくれた。「面接前は缶ビールを飲んでました。いつもの自分が出せて受かったんです」。

思わず「あぶさんのエピソードか」と頭の中でツッコんだ。同時にかつての憧れを思い出した。

就活本番。人見知りで緊張しいなこともあり、ここぞの面接でお酒に頼ることにした。とはいえ日本酒、缶ビールは飲みきれないほど、弱い。

そんな私にぴったりの救世主が現れた。

「ほろよい」。表示上のアルコール度数は3%だが、私にとっては100%だった。

面接前日に用意し、最寄り駅から面接会場までの道中でちびりと飲む。ルーティンを確立させると、どんどん面接を突破。

一連の所業を知った際に「あんたバカ?」とあきれていた母親も「はい、いつもの」といつの間にか仕入れ担当を担っていた。家族のサポートも借り、大本命企業の面接を迎えた。

★大一番で"断酒"

「JRA」。

競馬の魅力を発信することが夢だった。試験などを突破し、いよいよ東京競馬場での面接を迎えた。

大一番がきた。ついに「ほろよいしぶき」の時が来た。

代打を告げられた時のあぶさんのような気持ちでかばんを開いた。ワクワクは一瞬にして消えた。