「顔じゃ負けるが、野球じゃ負けられない」金村義明の報徳に劇的敗戦/荒木大輔〈7〉
早実時代、荒木大輔のサインは直球とカーブしかありませんでした。剛球でも縦割れでもない、独自の工夫で輝きを取り戻し、再び舞台に戻ってきます。一過性でないフィーバーの裏側、貴重な証言です。(2017年7月19日掲載。所属、年齢などは当時)
高校野球
★ツーシーム、ワンシーム
夏の甲子園で準優勝した1年時の荒木は、ナチュラルにシュートする直球を自在に操っていた。だが2年生になり、体が大きくなると、直球のスピードは上がり、きれいなフォーシームが決まるようになった。
「だんだん自分のイメージ通りのボールに近づいてきたから。打たれるよ、やっぱり。130キロ台後半でしょ。真っすぐで回転が良かったら、バッターからしたら打ちやすいボールになっていた」
1年時にシュート回転していた直球は、打ち気のバッターの芯を微妙に外し、ゴロを打たせていた。だが、成長にともない投げられるようになった教科書通りの直球は、相手にとっては打ちごろのボールになった。
無心で投げ続けた1年生の時とは変わり、荒木は工夫を開始する。
「ツーシームの握りにしたり、ダルビッシュが言うワンシームだって練習では投げていた。1本にかけた方が落ちはいいから」
現代野球では主流の「動くボール」の認知度が低かった時代に、ボールにある2本の縫い目に指をかけるツーシームやシュートに挑戦した。
捕手の松本達夫は「サインは基本的には真っすぐとカーブ。何でストレートがこんなにシュートするんだと思ってました。もっといい回転のボールを投げて欲しいなと。左バッターの時に、外に逃げるボールとか、本人が出し入れしてたんでしょう。意識して投げているなんて、思ってもみなかった」と言う。
荒木自身が考え、打者の力量や場面を判断し、捕手にも告げずに投げ分けたボールだった。
★2年夏の3回戦 9回裏
3季連続の出場となった2年夏の甲子園は、順調に勝ち上がった。
1回戦の高知戦は9回1安打10奪三振で完封。続く2回戦の鳥取西戦は、8回を無失点に抑える好投で勝利した。カーブに加え、ナチュラルシュートではなく、握りを変え、狙って投げるシュートを操り、「甲子園のアイドル」は輝きを取り戻した。
3回戦は、優勝候補の報徳学園(兵庫)と対戦する。相手のエース兼4番は元西武の金村義明。

東京都出身。2000年入社。
写真部、盛岡支局を経て、05年11月から野球部に所属。担当歴はロッテ―アマ野球―ヤクルト―アマ野球―NPB―遊軍―巨人。
直近は原監督が復帰した19年から2年間巨人を担当し、21年から野球部デスク。