「究極のくせ者」中島卓也のファウル打ち/プロの技〈1〉

オンリーワンの技術に酔う。紙面の長期連載「野球の国から」より「プロの技」をピックアップしました。本人解説のこだわりを観戦のお供に!(2015年2月20日掲載。所属、年齢などは当時)

プロ野球

プロがうなる技がある。特に抜きんでた技術を持つ7人を探した。「技」と題し、7回お送りします。初回は昨季初めて規定打席に到達した日本ハム中島卓也内野手(24)です。武器は、執拗(しつよう)なまでのカット打法。カギはミートポイントとバット軌道。その「技」に迫りました。

★大谷からの褒め言葉

昨年11月に行われた「侍ジャパン対ソフトバンク・日本ハム連合」の試合前のことだ。日の丸を背負った大谷が、この日は対戦相手だった中島に駆け寄った。「今日、粘らないでくださいね。(侍ジャパンの投手陣)みんなが言ってますから」。これは〝最高の褒め言葉〟。中島の代名詞ともなったカット打法は、球界を代表する投手たちが嫌がる、脅威になった。

▼中島の昨季ファウル数パ・リーグ17位の395。ただし、1打席あたりでは0・857本と非常に多く、ファウル数上位30人の中では伊藤(オリックス)に次いでリーグ2位となる。全投球数(1929)に占めるファウルの割合は20・5%。ファウルを多く打つため、1打席あたりの投球数は4・18(同30人中5位)と増える。打率こそ2割5分9厘(リーグ23位)と低いが、投手にとって「簡単に凡退しない、しつこい打者」と言える。

いまや1打席で10球以上投げさせることも珍しくない中島が「一番うれしかった」と話すのは、昨年7月27日楽天戦だ。

1点を追う7回1死二塁、マウンドには完投ペースの則本がいた。2球で追い込まれたものの、ファウルを実に7球打ち、最後の最後に四球を選んだ。

13球を投げた上にピンチを広げた則本は落胆。直後、中田に逆転3ランを浴びた。「四球を選ぶことで、こうやってゲームが動くことがあるんだな」。中島は陰の立役者となる心地良さを味わった。

曲芸師のように、どんなボールもファウルにしてしまう中島であっても、初球からそんなことをしようとは考えていない。

思考を、打法を変えるのは、2ストライクを取られてからだという。「追い込まれたら、安打は打ちに行かないです。極端に言うと、ファウルを打ちにいってます」。

具体的には、インパクトのポイントをいつもよりも捕手側に置き「内角の球でも三塁方向にファウルするイメージ」で、極限までボールを見極めてスイングする。

★レベルスイング

さらに練習で取り組んでいるのは、バットの「軌道の微調整」である。176センチ、70キロ。プロ野球選手の中ではきゃしゃな部類に入る中島は以前、「強い打球を飛ばしたい」と、力強くスイングすることを追求した。

だがその結果、体が開き、打撃フォームのバランスは崩れ、上から下へ「バットでボールを切ってしまう」悪癖がついてしまった。これでは、ボールの軌道とバットの軌道が、1点でしか交わらなくなる。

そこで意識したのが、レベルスイング。ボールを線で捉えるようにすれば、それだけバットに当てることは容易になる。スイング軌道をコーチらに細かくチェックしてもらいながら、ティー打撃で反復練習を繰り返した。